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解説は、日本スペースガード協会藤原さんです。問題の「公式に認められている星座の数はいくつあるか」で、正解は88個でした。太古の昔から、人々は天上に広がる果てしない宇宙を見上げてきました。夜空に輝く星を見て、洪水の時期や穀物の収穫時期を知ったり、また星の方向を頼りに大海原へ船を漕ぎだしたりと、人間の営みは星と深く結びついていました。更には星の並びに想像を巡らせ、星と星を繋いで神々や動物などに見立て、名前をつけていました。これが後に「星座」と呼ばれるものになりました。北半球で見られる星座の発祥は、4000年~5000年前のメソポタミア地方です。バビロン近郊で発見された粘土板には、「さそり座」や「ペガスス座」といった星座の絵が描かれています。海洋民族フェニキア人の地中海交易を通じてそれらがギリシャへ伝えられると、神々や英雄の物語と結びついて星座の神話が成立しました。紀元前8世紀のホメーロスの叙事詩、「イーリアス」と「オデッセイア」には「オリオン座」や「うしかい座」「おおぐま座」といった星座が登場します。このようにギリシャ神話と結びついた星座はプトレマイオス星座とも呼ばれています。プトレマイオスは48個の星座の1022個の恒星の観測記録を「アルマゲスト」という本にまとめました。この本は天文学の本としては現存する最古のもので、ここに記録された48の星座は「プトレマイオスの星座」と呼ばれるようになりました。なお、トレミーの星座と表記されることもありますが、トレミーとはプトレマイオスの英語読みです。現在使われているのは47星座で、「アルゴ座」だけは使われていません。「アルゴ」とはギリシャ神話に出てくる船の名前です。非常に大きな星座だったため、後にりゅうこつ座、とも座、ほ座、らしんばん座の4つに分割されました。また、南半球から見える星座は、16世紀以上の大航海時代につくられました。当時の航海で使われた最新の科学技術機器や発明品、ヨーロッパの人たちが初めて目にする珍しい動物などが新たに星座として加わりました。北半球にいる私たちは、なかなか聞きなれないですが、「望遠鏡座」「コンパス座」「カメレオン座」といった星座があります。一方、中国を中心とする東アジアでは、西洋とまったく異なる星座が使われていました。今から2500年ほど前に皇帝を中心とした官僚制度や社会を反映させた星座がつくられました。当時の中国には、地上の世界を天に投影させるという思想があり、空全体を一つの国家として見立てていたのです。日本でも古代から江戸時代までこの星座がつかわれていて奈良県の「キトラ古墳」や「高松塚古墳」では、中国の星座が描かれた天文図が発見されています。「星座」の決め方は、20世紀初めまで世界共通のルールがなく、数も名前も、国や地域、時代によりまちまちでした。現在私たちが使っている星座は、その名称とラテン語名からとったアルファベット3文字の略符、星座の境界線が国際天文学連合IAUによって学術的に決められていて、その数は88個あります。1つ1つの星座には決められた空の領域があり、全ての天体は必ずどこかの星座の領域に属します。私たちが普段「北極星」「北斗七星」「すばる」といった呼び方は、実は星座の名前ではありません。北極星はこぐま座の星、北斗七星はおおぐま座の一部、すばるはおうし座にある星団の名前です。また、星占いでよく見かける12星座は、元々天文学的に重要な意味を持っていました。これらの星座は地球から見た太陽の天球上の通り道である黄道に沿って並んでいて、太陽や月、惑星の位置を示す基準として使われていました。厳密にいうとへびつかい座も黄道にかかっているのですが、へびつかい座は黄道12星座には含まれません。黄道12星座の始まりはおひつじ座ですが、歳差運動といって地球の自転軸が約2万6千年の周期でゆっくり首振り運動をしているため、基準点が少しずつずれ、現在はうお座に移動しています。太陽は1年かけて12の星座をひとめぐりするのですが、一つ一つの星座が占める天球上の広さは異なるため、太陽が通り過ぎる時間は均一ではありません。そこで1周360°の黄道の円を30°ずつ均等に12分割し、1つずつ星座を当てはめました。これを黄道12宮といいます。自分が生まれた時に太陽がどの宮にいたかで自分の誕生日の星座が決まります。自分の誕生日に自分の星座を見ることができないのは、自分の星座がちょうど太陽の近くにある、つまり昼間の時間帯に地平線上にあり、星が見える夜になると地平線の下に沈んでしまうからです。そういう訳で残念ながら誕生日に自分の星座を見ることは難しいのですが、誕生日の3か月ほど前でしたらよく見えますので、みなさんもぜひこの時期を狙って自分の誕生日の星座を探してみてください。一番広い星座と一番狭い星座を紹介します。一番領域の広い星座はうみへび座です。ギリシャ神話で勇者ヘルクレスに退治された怪物のヘビです。春から初夏にかけて南の空で見ることができますが、領域が広い割に明るく目立つ星がないので、探すのが少し難しい星座です。反対に最も面積の狭い星座はみなみじゅうじ座です。2つの1等星を含む4つの明るい星があってとても目立つのですが、南の低い位置にあるため、日本では沖縄や小笠原諸島を除き、見ることが困難な星座です。みなみじゅうじ座は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」に、終着駅「サウザンクロス」として登場します。主人公が銀河鉄道に乗り込んだのははくちょう座の辺り。翼を広げた白鳥の姿は十字の形にも見えるため、はくちょう座は北十字とも呼ばれています。銀河鉄道の夜は、北十字から南十字へ旅する物語でもあるのです。さて、日本は南北に長いため、緯度によって見える星空の範囲が異なります。みなみじゅうじ座は日本から見えにくい位置にあると説明しましたが、88星座のうち、北極星の反対側である天の南極付近にある星座は、日本から全く見ることができません。「カメレオン座」「テーブルさん座」「はちぶんぎ座」の3つですです。岡山からですと、「きょしちょう座」「くじゃく座」「コンパス座」「とびうお座」「はえ座」「ふうちょう座」「みずへび座」「みなみのさんかく座」なども見ることが難しい星座です。各季節の見つけやすい星座について紹介。今の季節、天頂の高いところを横切っていくのがペガスス座です。大きな台形はペガススの胴体部分で、秋の四辺形と呼ばれています。寒くなる季節の見どころは、競うように明るく輝く星とそれを擁する星座たちです。まず最初に地平線から上がってくるのは黄色の明るい星カペラと5角形が目印のぎょしゃ座、そしてオレンジ色のアルデバランとヒヤデス星団、プレヤデス星団和名すばるのあるおうし座、続いて出てくるのが冬の主役オリオン座。赤い色のベテルギウスと青白い色のリゲル、そして3つ星が目印です。その北にはカストルとポルックスという明るい星が2つ並んだふたご座があります。続いて上ってくるのはこいぬ座、プロキオンという明るい星が目印です。最後は太陽を除く全天で最も明るい星、シリウスがギラギラ輝くおおいぬ座です。オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウスを結ぶときれいな正三角形になります。また、おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のリゲルを結んだ六角形は、冬のダイヤモンドと呼ばれています。春になって見えてくるのは、クエスチョンマークを逆さにしたような形が目印のしし座です。しし座には1等星のレグルスと、2等星のデネボラという2つの明るい星があります。続いて上ってくるのはうしかい座、オレンジ色の明るい星はアルクトゥルスです。南の空に見えるのがおとめ座、白く輝くスピカがあります。しし座のデネボラ、うしかい座のアルクトゥルス、おとめ座のスピカの3つの星を結ぶと、春の大三角になります。夏は七夕でよく知られた織姫星と彦星を見ることができます。織姫星はこと座のベガ、彦星はわし座のアルタイルです。両方とも白くて明るい星です。もう一つの明るくて白い星ははくちょう座のデネブ。この3つを結ぶと夏の大三角になります。はくちょう座は十字の形をしているので、すぐ見つけられると思います。もう一つ、南の空にSの字型をして見えるのがさそり座です。心臓のところには赤く不気味に輝く星アンタレスがあります。そしてさそり座のすぐ東隣りにあるのがいて座です。6つの明るい星がひしゃく型に並んでいるのが特徴です。このひしゃく型は北斗七星に対して、南斗六星と呼ばれています。いて座の辺りをよく見ると、ぼやっとした雲のようなものがあります。いて座は私たちのいる銀河系の中心方向にあり、たくさんの星が集まっているところが雲のように見えるのです。星の集まりは川のように延びていて、はくちょう座付近を通り、さらに北まで続きます。これが天の川です。織姫星と彦星はこの天の川の両岸に位置していて、二人は七夕の夜、この川を渡って会いに行くことになります。このように、季節によって色々な星座や星たちに出会うことができます。以上、解説は、日本スペースガード協会藤原さんでした。
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