1人あたり「約8万8,000円」の重み――川辺川ダム計画60年、強制収用へ向かう事業認定と「費用対効果」の真実

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1人あたり「約8万8,000円」の重み――川辺川ダム計画60年、強制収用へ向かう事業認定と「費用対効果」の真実

1966年(昭和41年)の計画発表から今年でちょうど60年を迎えた川辺川ダム計画。2027年度の本体着工、2035年度の完成に向け、2026年7月に入り大きな動きが相次いでいます。金子国土交通大臣による事業認定の告示や、開示文書から明らかになった巨額の熊本県負担額、そして疑惑の「費用対効果(B/C)」について、元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が解説します。聞き手はRKKの江上浩子です。🔶 事業認定告示と、明らかになった「県民1人あたり約8万8,000円」の負担2026年7月15日、金子国交大臣が川辺川ダム計画に対する「事業認定」を告示しました。これにより、任意の協議で取得できなかった土地について、県の収用委員会の採決をもって強制収用することが可能となります。土地の99%は取得済みであり、行政側にとっては着実な前進と見られますが、その裏で巨額の公金負担の実態が浮き彫りになりました。7月1日、市民グループ「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」が県の情報公開文書をもとに発表したデータによると、以下の事実が判明しています。 * これまでに熊本県が負担した額: 約520億円 * 今後、熊本県が負担する見込み額(市民グループ独自試算): 約620億円 熊本県の推計人口(2025年10月1日時点:168万3,115人)で割ると、生まれたばかりの赤ん坊も含めて県民1人あたり「約8万8,000円」の負担となります。 4人家族であれば35万円を超える計算です。さらに近年の建設コストや資材価格の高騰を考慮すれば、この金額が膨らみ続ける懸念はぬぐえません。これに対し、木村敬熊本県知事(7月2日会見)は「県民の命と暮らしを守るため、負担金を払ってもダムを推進する」と表明しています。🔶 費用対効果(B/C)「2.4」のからくり――過去の支出を外すと見えてくる「0.4」の実態大型公共事業を実施・継続するにあたっては、費用対効果(B/C=ベネフィット・パー・コスト)が「1.0」以上であることが要件とされています。川辺川ダムの費用対効果は公表上「2.4」とされていますが、ここには大きな「計算上の仕掛け」が存在します。【費用対効果(B/C)の現実】▶ 国交省の公表値(残事業のみ):2.4▶ これまで投入した過去の全費用を含めた実質値:0.4▶ 洪水の被害想定(過大評価)を現実的に修正した試算:0.1国交省のルールでは、過去に投入した巨額の費用を計算式から除外することが認められているため、見かけ上のB/Cを高く維持できています。しかし、全体の投入コストから見れば「1.0」を大幅に下回る「0.4」、さらに嘉田由紀子参議院議員が指摘するように被害想定の過大さを正せば「0.1」まで下落するのが実態です。🔶 2020年豪雨の教訓――救えなかった命と「共同検証」の拒否2020年7月の球磨川豪雨水害において、流域で亡くなった50人の方々の死因について、市民グループが200人以上の住民へ聞き取り調査を行いました。その結果判明したのは、死亡原因のほとんどが「球磨川本流の水位がピークに達する数時間前に起きた、支流の氾濫や増水、山の斜面崩落」であったということです。ダムは上流で降った雨を一時溜める機能しか持たず、下流域で起きた支流の氾濫や斜面崩落を防ぐことはできません。市民グループは県や国に対して「共同検証」を呼びかけていますが、木村知事は「共同検証を行うと、国や有識者、一部住民の見解を全否定することになる」として拒否を続けています。🔶 新刊『球磨川流域物語』に学ぶ、対話を逃げない姿勢宮脇氏は、2026年7月1日に刊行された嘉田由紀子氏の著書『球磨川流域物語 水害、ダム問題に挑む女性たち』(つり人社)を紹介しました。本書の中では、かつて熊本県知事を務めた潮谷義子氏のエピソードが取り上げられています。2001年12月、相良村の体育館に3,000人もの住民が集まった激しい討論会の場において、夕方5時を過ぎて退場しようとした賛成派の住民に対し、潮谷知事(当時)は次のように訴えました。「この議論はまだ終わっていません。ぜひとどまってください」事業を強硬に進めるのではなく、賛反対立の渦中であっても正面から対話に向き合おうとした当時の熱量と姿勢こそが、いまの行政に強く問われています。🔶 まとめ総事業費4,900億円(残事業費2,560億円)という巨額の予算が動く川辺川ダム計画。単なる「治水対策」という説明にとどまらず、将来世代が背負う財政負担や、本当に命を守るために必要な防災対策は何なのかについて、私たちがデータと事実に基づいた検証を続けていく必要があります。出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん聞き手:江上浩子(RKK)

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