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エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!!第1金曜日・・・映画解説・研究者上妻祥浩さん第2金曜日・・・ライブ配信ディレクター斉場俊之さん第3金曜日・・・熊本市立出水南中学校校長田中慎一朗さん第4・5金曜日・・・元RKKアナウンサー宮脇利充さん◆WEBhttps://rkk.jp/515news/◆メール515@rkk.jp★地上波ではRKKラジオ(熊本)FM91.4AM1197で、毎週金曜日午後5時15分から放送中。是非生放送でもお聴きください。

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エピソード

年末は映画館で心温まる時間を 「エディントンへようこそ」「楓」「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」

年末は映画館で心温まる時間を 「エディントンへようこそ」「楓」「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」

年末は映画館で心温まる時間を 「エディントンへようこそ」「楓」「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」

上妻祥浩さんが選ぶ12月公開の注目作3本映画解説研究者・上妻祥浩さんが、年末に公開される注目の3作品を紹介しました。今月のキーワードは「分断」と「再生」、そして「共に生きる」。世界や社会のひずみ、人間関係の傷を抱えながら、それでも前を向こうとする人々の姿が描かれます。分断と不安の行き着く先🔶「エディントンへようこそ」(12月12日公開) 公式サイトはこちら👉https://a24jp.com/films/eddington/最初に紹介されたのは、アリ・アスター監督×ホアキン・フェニックス主演の新作「エディントンへようこそ」です。物語の舞台は2020年、コロナ禍のまっただ中にあるアメリカ・ニューメキシコ州の小さな町エディントン。ロックダウンで人々の不安と不満が蓄積し、町はいつ爆発してもおかしくない状態に追い込まれています。主人公は、保安官ジョー(ホアキン・フェニックス)。IT企業の誘致で町を「救おう」とする野心家の市長テッド(ペドロ・パスカル)と、「マスクをする・しない」をきっかけに対立し、やがてジョーは「それなら自分が市長になる」と、市長選への出馬を決意します。選挙戦がヒートアップするにつれ、SNSにはフェイクニュースと憎悪があふれ、炎上が炎上を呼ぶ混沌状態に。同じころ、ジョーの妻ルイーズ(エマ・ストーン)は、カルト集団の教祖ヴァーノン(オースティン・バトラー)の扇動的な動画にのめり込み、陰謀論に取りつかれていきます。エディントンの選挙戦は、疑心と論争と怒りが渦を巻き、町全体が破滅のふちへと突き進んでいきます。「コロナ禍は“きっかけ”にすぎなくて、人間の不安や恐怖がどう暴走していくのかを描いた作品です。SNSや陰謀論が現実を飲み込んでいく怖さを、ちょっと距離を置いて見つめ直せます」(上妻さん)スピッツ「楓」に導かれる、切なくも美しいラブストーリー🔶「楓」(12月19日公開) 公式サイトはこちら👉https://kaede-movie.asmik-ace.co.jp/2本目は、熊本出身の行定勲監督による最新作「楓」。スピッツの名曲「楓」を原案に、ひとつの“秘密”を抱えた恋人たちの物語が紡がれます。福士蒼汰さんが一人二役で演じるのは、双子の兄弟・楓と楓太。弟・楓太が事故で突然命を落とし、その恋人・さち(福原遥さん)はショックのあまり、兄・楓を亡き恋人と勘違いしてしまいます。楓は真実を明かせないまま、弟のふりをして、彼女と「恋人として」生きていくことを選びます。ふたりの周囲の人々は、どこか違和感を覚えながらも見守るしかありません。ニュージーランドで撮影された大自然の風景が、切ないラブストーリーに透明感を添えます。「福士蒼汰さんは、兄と弟の微妙な差を、声のトーンや立ち姿で演じ分けています。福原遥さんのまっすぐな感情表現も相まって、観ているこちらの心が何度も揺さぶられました」(上妻さん)行定監督と主演のふたりは、熊本日日新聞社のフリーペーパー「くまにちすぱいす」のインタビューにも登場。作品に込めた思いや、ニュージーランドロケの裏側などを語っています(12月19日発行号に掲載)。笑って泣ける“やさしいクライム・ムービー”🔶「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」(12月26日公開) 公式サイトはこちら👉https://somethingextra-movie.jp/最後に紹介されたのは、フランス発のハートフルコメディ「サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行」です。物語の主人公は、宝石店に押し入った父と息子の泥棒コンビ。逃走の途中で、障害のある人たちと支援者のグループによるサマーキャンプの一行に紛れ込み、「付き添いボランティア」のふりをして旅に同行することになります。一緒に過ごすうちに、泥棒親子の中に少しずつ変化が生まれていきます。障害のある人たちとの交流を通じて、自分本位だった彼らが他者を思いやる感情を取り戻していく姿が、ユーモアと温かさをもって描かれます。この作品には、実際に障害のある11人のアマチュア俳優が出演。脚本も、出演者それぞれに合わせて“当て書き”されており、その自然な存在感が作品の魅力となっています。「エンタメとしてきちんと笑わせてくれる一方で、障害のある人たちへの敬意がきちんと描かれています。ラストは“ニヤッとしながら、じんわり泣ける”タイプの映画ですね」(上妻さん)日本版予告編のナレーションは、フランスと日本を拠点に活動する俳優・杏さんが担当。軽やかで温かみのある声が、作品の雰囲気を引き立てています。年末年始は“人の心”を見つめる映画を「今回ご紹介した3作品は、それぞれアプローチは違いますが、みんな“人間の心の奥”を丁寧に描いています。分断や秘密、偏見や迷いを抱えた人たちが、誰かとの出会いや出来事を通じて、少しずつ変わっていく。年末に、人生を振り返りながら観るのにぴったりだと思います」(上妻さん)忙しい師走だからこそ、映画館でゆっくりと物語に浸ってみてはいかがでしょうか。きっと、自分自身の生き方や大切な人との関係を、そっと見つめ直すきっかけになるはずです。聞き手:江上浩子(RKK)

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台湾有事は「存立危機事態」か ――高市首相発言と世論調査が映す“変わりゆく日本”

台湾有事は「存立危機事態」か ――高市首相発言と世論調査が映す“変わりゆく日本”

台湾有事は「存立危機事態」か ――高市首相発言と世論調査が映す“変わりゆく日本”

元RKKアナウンサーの宮脇利充さんが、高市早苗首相の国会答弁と世論調査の結果から、日本社会の変化について語ります。聞き手はRKKの江上浩子です。🔶 発端は「台湾有事は存立危機事態になりうる」発言11月7日、衆議院予算委員会でのことです。立憲民主党の岡田克也議員の質問に対し、高市早苗首相が次のような趣旨の答弁を行いました。▶ 中国・北京政府が台湾を完全に支配下に置くため、戦艦を動かし武力行使を伴う行動に出た場合、それに対しアメリカが軍を派遣するようなケースであれば「どう考えても存立危機事態になりうるケースであると私は考える」「台湾有事」が日本の「存立危機事態」に当たりうる、と首相自らが明言した形です。宮脇さんは、この発言そのものにも驚きを覚えたとしたうえで、「それ以上にショックだったのは、その受け止め方を示した世論調査の結果でした」と話します。🔶 「存立危機事態」と集団的自衛権とは何か高市首相の答弁を理解するためには、「存立危機事態」と「集団的自衛権」というキーワードを押さえる必要があります。まず「集団的自衛権」とは・・・ 自国が直接攻撃されていなくても、密接な関係にある他国への武力攻撃に対し、実力を用いてそれを阻止する権利と国際法上定義され、日本政府も同様の説明を行っています。日本では長く「専守防衛」を掲げ、海外での武力行使や集団的自衛権の行使は、「憲法上許されない」とされてきました。流れが変わったのは、第二次安倍政権の2014年です。▶ 2014年7月第二次安倍内閣が「集団的自衛権の限定的行使を容認する」とする閣議決定▶ 2015年安全保障関連法(いわゆる安保法制)が成立し、「存立危機事態」が法律上定義される法律上の「存立危機事態」は、要約すると次のような状態を指します。▶ 日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、その結果、日本の存立が脅かされ国民の生命・自由・幸福追求の権利が「根底から覆される明白な危険」がある場合。この条件を満たしたと内閣が判断したとき、日本は集団的自衛権を行使し、自衛隊が武力行使に参加できる――つまり「海外で戦闘に関わる可能性が現実化するライン」が「存立危機事態」だといえます。🔶 世論調査が映した「問題なし」50%という現実では、高市首相の国会答弁を、世論はどう受け止めたのでしょうか。毎日新聞と社会調査研究センターが今月実施した世論調査では、「台湾有事が存立危機事態になりうる」とした高市首相の答弁について、▶ 「問題があったと思う」……25%▶ 「問題があったとは思わない」……50%という結果が出ました。宮脇さんは、「数字を見て思わず『逆じゃないのか?』と感じた」と振り返ります。調査結果の内訳を見ていくと、傾向はよりはっきりします。▶ 自民党支持層の65%、日本維新の会支持層の54%、国民民主党支持層の65%が「問題なし」▶ 参政党・日本保守党の支持層では「問題なし」が8割を超える▶ 年代別では、40歳以下の55〜60%が「問題なし」と回答▶ 一方で60代は49%、70歳以上は41%と、年齢が上がるほど「問題視する」傾向が強まる「若い世代ほど、高市首相の発言を“問題ない”と受け止めている。このことに、強い違和感と危機感を覚えました」と宮脇さんは語ります。🔶 「日本の存立を脅かす」のは何かここで、もう一度「存立危機事態」の中身に立ち返ってみます。高市首相の答弁は、▶ 中国が台湾に上陸・封鎖などの行動に出る▶ それに対しアメリカが軍を派遣する▶ その結果、日本もそれに「加勢」するケースは「存立危機事態になりうる」という筋立てでした。宮脇さんは、ここに大きな論点があると指摘します。「日本の存立が本当に脅かされるのは、中国とアメリカが戦火を交える“から”ではなく、そこに日本が自衛隊を派兵して“参戦するから”ではないか――そう考える必要があると思うんです」戦争は一度始まれば、どこで歯止めがかかるか誰にも分かりません。▶ 当初は自衛隊だけが前線に送られる想定でも、戦況次第では拡大する可能性がある▶ 「最小限の武力行使」で済む保証は、どこにもない▶ そのとき実際に危険にさらされるのは、若い世代そのものにもかかわらず、その世代の多くが「問題ない」と答えている。「自分たちが戦場に行く可能性まで想像したうえでの回答なのか、とても気になります」と宮脇さんは言います。🔶 それでも「派兵しない」選択肢はありうるさらに宮脇さんは、制度上のポイントも押さえます。▶ 「存立危機事態」に当たるかどうかを判断するのは、最終的にはその時々の内閣▶ 仮に台湾有事が起きても、「存立危機事態だが、自衛隊は派遣しない」と判断することも理屈の上ではありうる▶ そもそも、アメリカが必ず軍を動かすと決まっているわけでもない「だからこそ、首相が国会の場で『台湾有事は存立危機事態になりうる』と先んじて言ってしまうことの意味は重いと思います。日本がどの局面で“戦う側に回るか”というラインを、事実上前倒ししてしまう危険性があるからです」と指摘します。🔶 戦後日本の約束と、いま問われているもの宮脇さんが何より懸念しているのは、「日本は戦争をしない」という戦後日本の大前提が、いつの間にか揺らぎ始めているのではないか、という点です。日本国憲法前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し」という一文があります。これは、日本が二度と戦争を起こさないという誓いの表現でもあります。「他国からの侵略に対して自国を守る――それは当然のことです。しかし、自国が直接攻撃されていない段階で、海外の戦争に参加することが本当に許されるのか。そのラインを、世論も政治も、いつの間にか“緩めてしまっている”ように感じます」と宮脇さんは語ります。「世の中って、変わるときには一気に変わります。だからこそ、国会答弁一つ、世論調査一つを『まあそんなものだろう』で済ませず、本当にそれでいいのか、私たち一人ひとりが考える必要があると思います」🔶 新しい世論調査のかたちと、その重み今回の毎日新聞の世論調査は、電話ではなくインターネットを通じて行われました。▶ 社会調査研究センターが、NTTドコモの「dポイントクラブ」会員を対象にインターネット調査「dサーベイ」で実施し、全国の18歳以上を母集団とし、無作為抽出で1985人から有効回答を得た。という方法です。「従来とは違うやり方とはいえ、約2000人からの回答が示した傾向は、今の日本社会の“空気”の一端を確かに映していると思います。だからこそ、この結果を軽く扱うのではなく、じっくり向き合う必要があると感じました」宮脇利充さんの話は、「平和」を前提としてきた戦後日本が、いまどこに立っているのか――その足元を問い直すきっかけを投げかけています。

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教育は“カスタマーサービス”ではない ――田中慎一朗校長が語る、学校と社会の関係

教育は“カスタマーサービス”ではない ――田中慎一朗校長が語る、学校と社会の関係

教育は“カスタマーサービス”ではない ――田中慎一朗校長が語る、学校と社会の関係

熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、「教育は保護者向けのカスタマーサービスではなく、社会全体のための公共サービスだ」と語ります。子どもの幸せと、保護者の安心。その両方を支えながらも、「お客様満足」に引きずられすぎると、本来の教育が痩せてしまうのではないか――。聞き手は、RKKの江上浩子です。🔶 教育は“保護者サービス”ではなく「公共サービス」田中校長は、教育の大前提としてこう語ります。「学校は保護者の皆さんから預かった子どもたちの“幸せ”のためにある場所です。その背景にはもちろん、保護者の皆さんの幸せもあります。ただ、その役割は『カスタマーサービス』ではなく、社会の基盤をつくる『公共サービス』だと思うんです」教育は、特定の“お客さま”の満足度だけを上げるサービスではなく、社会全体の将来のために、子どもたちを育てていく営みです。▶ 子ども個人の「今の満足」だけを満たす場ではない▶ 10年後・20年後の社会を支える土台をつくる場▶ その意味で「公共の利益」に資するサービスであるだからこそ、ときには子どもにとって「楽しい」だけではない経験も必要になります。🔶 「楽しい授業」だけでは育たないもの近年、教育現場には「もっと楽しく、分かりやすく」という声が高まっています。田中校長も、それ自体は否定しません。「学びを工夫して、できるだけ前向きに取り組めるようにすることは、とても大事です」しかし一方で、子どもの頃の自分を振り返ると――と、こう続けます。▶ 授業中は45〜50分、席に座って話を聞かなければならない▶ テストの前は机に向かうのがつらい▶ 本当は「ずっと休み時間が続けばいい」と思っていた。勉強は、必ずしも「楽しいことだけ」ではありません。それでも、コツコツ続ける中でしか身につかない力があります。「『子どもが楽しいと言っているから良い』『保護者の希望どおりにしておけばトラブルにならない』という方向に流れすぎると、学校が“本当に伝えるべきこと”を手放してしまう危険があります」🔶 「カスタマーサービス化」への危惧田中校長が今、特に気にしているのは「学校の教育活動がカスタマーサービス化していないか」という点です。▶ 保護者の要望に“とにかく応えること”が優先される▶ 子どもが嫌がること・きついことは、できるだけ避ける▶ 表面的にはトラブルが減り、子どもも保護者も“一見満足”しているように見えるしかし、その結果として――「学校でどんな経験を積み、どんな力を身につけるのか、という本質が薄れてしまうのではないか。そこに強い危機感を持っています」学校は、社会全体で育てていくべき子どもたちの「最後の砦」です。ここで必要な経験まで手放してしまうと、こぼれ落ちてしまう子どもが確実に増えていく――田中校長は、そう指摘します。🔶 「隠れ校則」だけが原因なのか? 不登校報道への違和感文部科学省が毎年行っている「問題行動・不登校等調査」。その報道の中で、最近よく取り上げられるキーワードが「隠れ校則」です。▶ 授業開始2分前には着席していなければならない▶ なるべく挙手するよう強く促される▶ ロッカーや棚の中の整理の仕方、かばんの置き方まで細かく決められているこうした“明文化されていない決まりごと”が、子どもたちを追い詰め、不登校の一因になっているという指摘もあります。もちろん、そうしたケースがあること自体は否定できません。しかし田中校長は、そこだけが強調される流れに違和感を覚えています。「一方で、『授業中がうるさすぎて、集中できない』『ちゃんと勉強したいのに、クラスが落ち着かなくてつらい』という理由で、学校に行きづらくなっている子どももたくさんいるんです」▶ チャイムが鳴っても授業がなかなか始まらない▶ 私語が多く、授業が中断されがち▶ 「静かな環境で学びたい」という子どもほど、教室がつらくなるその子たちも、結果的には不登校になります。「“着席2分前”だけが悪者で、“自由さ”だけが正義かのように扱われると、学びたい子どもたちのニーズが見えなくなってしまいます」不登校の背景は、本当にさまざまです。一つのキーワードを“見出し”にして原因扱いしてしまうと、他の多くの子どもの声が埋もれてしまう危険があります。さらに、政策との関係も指摘します。「仮に『不登校の原因は隠れ校則だ』と一面的に扱われると、国としてはそこに重点的に予算をつけることになりますよね。でも、それが全体の一部でしかないとしたら、他の要因への手当てが遅れてしまいます」🔶 家庭と学校、“連携”のイメージがずれている家庭と学校・地域の連携についてのアンケート結果も、田中校長は気になると語ります。保護者側が望んでいる連携は、主に次のようなものです。▶ 学校からの情報提供をもっと増やしてほしい▶ メールやお便りなどで、学校の様子・子どもの様子をこまめに知りたい一方で、教職員側が連携として重視しているのは――▶ 保護者と「協議する場」がほしい▶ 懇談会などで、直接意見交換できる時間が大事「保護者の皆さんは“情報を受け取ること”を連携と捉えている傾向があり、教職員は“対話や相談の場をもつこと”を連携と考えている。ここに少しズレがあるように感じています」本来は、▶ 子どもをどう育てていくのか▶ 10年後・20年後の社会をどう支える人になってほしいかという視点を、家庭と学校・地域が一緒に考えていく必要があります。そのためには、一方向の「お知らせ」だけでなく、お互いの考えを率直に交わす場づくりが欠かせません。🔶 学校は「社会の宝」を育てる場所田中校長は、こう締めくくります。「学校は、家庭の“お客様満足”を達成する場所ではなく、社会全体の宝である子どもたちを育てる『公共サービス』の場です。だからこそ、時には耳に痛いことも含めて、子どもたちに伝えなければならないことがあります」▶ 不登校の問題に、簡単な“犯人探し”で答えを出さないこと▶ 子どもの声を丁寧に聞きつつも、「伝えるべきこと」を手放さないこと▶ 家庭・学校・地域が対話を重ねながら、「子どもは社会全体の宝」という視点を共有すること「効率性や“コスパ”だけで教育を語るのではなく、子どもたち一人ひとりが未来の社会を支える存在だという視点から、みんなで考えていければと思います」教育を「サービス業」としてだけ見るのではなく、社会の土台をつくる営みとして、もう一度捉え直してみる。そんな視点を投げかけるお話でした。

12分

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あなたの移動、いくらかかってますか? ――「クルマのコスト」を見直すという節約術

あなたの移動、いくらかかってますか? ――「クルマのコスト」を見直すという節約術

あなたの移動、いくらかかってますか? ――「クルマのコスト」を見直すという節約術

ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが、「あなたのその移動、いくらかかってる?」をテーマに、クルマと公共交通のお金の話をわかりやすく解説します。聞き手は、江上浩子(RKK)です。🔶 熊本城ホールで開かれた「交通熊本トーク」11月9日(日)、熊本城ホール二階ロビーで、斉場さんが企画したイベント「交通くまもととーく」が開催されました。▶ 熊本城ホールのにぎわい創出イベントの一つとして実施▶ 会場にはカフェブースや子ども向けおもちゃコーナーも設置▶ 家族連れがコーヒー片手に、気軽に「交通の未来」を話し合える場に熊本電鉄(熊本電気鉄道)や熊本市交通局、熊本県・熊本市の担当者も“有志”として参加。鉄道会社・バス会社・行政・市民の垣根を越えて、「みんなが使いやすい交通を、みんなで考える」そんな場づくりを目指したイベントでした。🔶 移動にかかっているお金、見えてますか?イベントで斉場さんが投げかけたのは、こんな問いです。「街なかにクルマで出かけるとき、移動にいくらかかっているか、ちゃんと分かっていますか?」電車やバスは、乗るたびに運賃を払うので“見えるお金”です。一方でクルマはどうでしょうか。多くの人が思い浮かべるのは・・・▶ 駐車場代▶ ガソリン代この二つくらいではないでしょうか。しかし、実際にはそれ以外にも、クルマにはこんなお金がかかっています。▶ 車両本体の購入費(ローンの返済を含む)▶ 自動車保険料▶ 車検・点検・修理などの整備費▶ 自動車税などの各種税金▶ 自宅や勤務先の駐車場代つまり、「持っているだけでかかっているお金」が想像以上に大きいのです。🔶 アプリ「SIMもビッグ」で見えた“本当の維持費”イベント会場には、興味深い展示も登場しました。それが、川合春平さんが発したというアプリ「SiMMobiC」です。このアプリに、▶ クルマの種類▶ 年間走行距離▶ 車両価格の目安など、基本的な情報を入力すると、日本人の平均的な税金・整備費などのデータをもとに、「あなたのクルマの維持費は、ざっくりいくらです」と試算してくれる仕組みです。斉場さんが自身のクルマ(普通車・年間一万五千キロ走行)で試算したところ、おおよそ次のような数字が出ました。▶ ガソリン代:約15万8千円/年▶ 自動車税:約5万2400百円/年▶ 整備費:約3万4000円/年▶ 保険料:約8万5000円/年▶ 車両代(減価償却相当):約18万245円/年▶ 駐車場代:〇円(郊外在住のため)合計すると――年間約51万円一日あたりにすると、約1,400円ほとんど動かさなかったとしても、「一日1,000円前後は、持っているだけでかかっている」という計算になります。🔶 クルマは「月3万円のサブスク」?年間51万円という金額は、月額に直すとおよそ4万2000円。ここから走行距離の違いなどを考慮して「ざっくり感覚」で捉えると、「クルマは月3万円のサブスク」というイメージが見えてきます。▶ 月3万円の“基本料金”を払い続けている▶ そこに、使うたびのガソリン代・駐車場代がさらに上乗せされる電車やバスは「乗らなければお金はかからない」可変費用ですが、クルマは「乗っても乗らなくても固定で出ていく」お金が大きいのが特徴です。「電気代やガス代と同じ“固定費”として、何となく意識しないまま払い続けている人が多いんですよね」(斉場さん)その分、可処分所得――自由に使えるお金――が知らないうちに削られているとも言えます。🔶 「安い店までのガソリン代」で、得しているつもりが…クルマがあると、ついこう考えがちです。▶ 「あのディスカウントストアまで行けば、日用品が安く買える」▶ 「郊外の大型店まで行ったほうが得」しかし、その移動にかかるコストを冷静に考えるとどうでしょうか。▶ ガソリン代▶ 駐車場代▶ クルマの維持費(固定費の“日割り分”)これらを合計すると、「近所のスーパーで、少しずつ買ったほうが実はトータルで安かった」というケースも、決して珍しくありません。「セカンドカーをほとんど動かしていないご家庭も多いですよね。“安く買い物しているつもり”が、維持費まで含めるとそうでもない、ということもあります」🔶 ライフスタイルから「本当にクルマが要る場面」を見直すもちろん、クルマが必要なシーンはたくさんあります。▶ 子どもの送迎や部活動の送り迎え▶ 高齢の家族を乗せての通院▶ 荷物が多い買い物や遠方への移動などただし、そのすべてが「マイカーでなければならないのか」は、一度立ち止まって考えてみる価値があります。例えば――▶ 夫婦で二台持っていたクルマを一台に減らす▶ 普段は公共交通+自転車、どうしても必要なときはタクシーやレンタカー▶ 車種を小型車にして、購入費・税金・燃料費を抑えるといった工夫で、「移動コストを下げつつ、生活の質は落とさない」という選択肢も見えてきます。「移動の固定費を見直せば、逆に“自分たちのために使えるお金”が増えるかもしれません」(斉場さん)🔶 AIやWebツールで「自分の移動費」を可視化するイベントで紹介されたアプリ「SiMMobiC」は、まだ一般公開前とのことですが、同じようにクルマの維持費を試算できるWebサイトやシミュレーターは、すでにいくつも存在します。また、いまは生成AIに対して、▶ 車種▶ 年間走行距離▶ 購入価格やローン▶ 駐車場代・保険料の目安などを伝えれば、「おおよその年間維持費はどれくらいか」といった見積もりを出してもらうこともできます。「AIの時代だからこそ、一度、自分の暮らしを“俯瞰”してもらうのも手です。移動手段とお金のバランスを見直すきっかけになります」(斉場さん)🔶 あなたの「一日分の移動」、本当はいくら?最後に、斉場さんはこんなメッセージを添えました。「渋滞を減らしたいという視点からお話ししてきましたが、実はこれは“暮らしを楽にする話”でもあります。いま使っている移動手段は、本当にそれがベストなのか。一回、数字で見える化してみてほしいんです」クルマは便利で、時には生活に欠かせない存在です。だからこそ、「当たり前」にしていたことを、一度立ち止まって見直してみることが大切なのかもしれません。あなたのその移動――本当はいくらかかっていますか?この記事をきっかけに、一度計算してみてはいかがでしょうか。お話は、ライブ配信ディレクター・斉場俊之さんでした。

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11月は“人間ドラマ”が豊作 上妻祥浩さんが語る注目の新作4本

11月は“人間ドラマ”が豊作 上妻祥浩さんが語る注目の新作4本

11月は“人間ドラマ”が豊作 上妻祥浩さんが語る注目の新作4本

――人生と向き合う4つの物語に込められた「光」映画解説研究者の上妻祥浩さんが、11月公開の注目作を語ります。テーマは「人間の心の奥にある“想い”をどう描くか」。家族・再生・母性・喪失――深い主題を抱えた4本がそろいました。聞き手はRKKの江上浩子です。🔶 孤独と再生を描く「港のひかり」(11月14日公開)公式サイトはこちら👉https://minato-no-hikari.com/舘ひろしさんが、かつてのヤクザから港町の漁師へと転身した男を演じる感動作です。北陸の小さな港町で静かに暮らす主人公が、目の不自由な少年と出会い、心を通わせながら過去と向き合っていきます。少年期を演じるのは、寺島しのぶさんの長男で歌舞伎俳優の尾上眞秀さん。10年後の青年期は眞栄田郷敦さんが担当。宇崎竜童/椎名桔平/斎藤工ら実力派が脇を固めます。撮影は日本映画界を代表する撮影監督木村大作さん。35mmフィルムによる圧巻の映像美が、海と“ひかり”の質感を鮮やかに刻みます。「デジタル全盛のいま、ここまで“光の粒”を感じさせる画は稀少。カメラワークだけでも一見の価値があります」(上妻さん)🔶 人生の旅路をめぐる「Tokyo Taxi」(11月21日公開)公式サイトはこちら👉https://tokyotaxi-movie.com/フランス映画『パリ・タクシー』(2023)の日本版リメイク。名匠山田洋次監督の第91作となる本作は、“出発から終点までの一日”を通じて、老女の半生と運転手の心の再生を描きます。85歳のすみれを倍賞千恵子さん、タクシー運転手を木村拓哉さん、若き日のすみれを蒼井優さんが演じ、三世代の時間が交錯。「倍賞さんの歌声が随所に流れるのも山田作品らしい。長年の信頼関係がにじむ演出です」(上妻さん)物語は、東京・柴又の帝釈天を起点に、神奈川県葉山の高齢者施設へ向かう“寄り道の旅”。過去の痛みや時代背景、そして人の絆が織り込まれていきます。🔶 母の決断を描く衝撃作「ナイトフラワー」(11月28日公開)公式サイトはこちら👉https://nightflower-movie.com/『ミッドナイトスワン』の内田英治監督が手がける社会派ドラマ。主演の北川景子さんが、借金を背負いながら2人の子を育てるシングルマザーを演じます。生活のために危険な密売へ踏み込んでしまう母の姿を、切実なリアリティで描写。北川さんは生まれ故郷の関西弁で挑み、感情が爆発する場面では「言葉が剥き出しの武器になる迫力」(上妻さん)。共演の森田望智さんは女性格闘家として彼女を支え、“女性同士の絆”が物語に深みを与えます。🔶 喪失と癒やしのロードムービー「兄を持ち運べるサイズに」(11月28日公開)公式サイトはこちら👉https://www.culture-pub.jp/ani-movie/長年疎遠だった兄の突然の死。身元引受人となった妹が、兄の遺体を引き取りに向かう道中で“知らなかった兄の姿”に触れていく物語です。監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太さん。柴咲コウさんが妹、オダギリジョーさんが兄、満島ひかりさんが兄の元妻を演じます。原案は小村恵理子さんの実体験に基づくエッセイ。「笑いながら泣ける、深い余韻が残る一本。観終わったあと、静かに心が温まります」(上妻さん)🔶 “心の奥”を映し出す4つの光「今回の4作品はいずれも“人間の内側”を丁寧に見つめています。血のつながりだけでなく、心のつながりで人が支え合う――そんな時代の希望を感じさせます」(上妻さん)この秋、映画館で自分の人生と重ねながら、4つの物語の“ひかり”を感じてみてはいかがでしょうか。

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日本初の女性総理・高市早苗内閣の外交デビューを読む――横須賀視察、赤坂プレスセンター、横田空域まで

日本初の女性総理・高市早苗内閣の外交デビューを読む――横須賀視察、赤坂プレスセンター、横田空域まで

日本初の女性総理・高市早苗内閣の外交デビューを読む――横須賀視察、赤坂プレスセンター、横田空域まで

高市早苗総理が就任後、立て続けに各国要人と首脳会談を重ねています。ドナルド・トランプ米大統領との会談後には、在日米海軍横須賀基地で原子力空母「ジョージ・ワシントン」(CVN-73)を視察しました。本稿では、その一連の動きをニュース解説風に整理しつつ、登場する人名・地名・施設名を正確な表記に修正・統一してお届けします。🔶 首脳外交ラッシュ:就任以来の動き▶高市総理は就任以来、ASEAN各国、韓国大統領との会談に続き、中国の習近平国家主席とも会談の場を持つ見通しです。世界に向けて「日本の女性首相」を印象づける外交デビューとなっています。▶ トランプ米大統領との日米首脳会談後には、連携強化を改めて確認しました。「国のトップが女性であること自体が、国内外への強いメッセージになります」(宮脇)🔶 横須賀での共同発信:日米同盟を前面に▶ 202X年10月28日、高市総理とトランプ大統領は在日米海軍横須賀基地で、原子力空母「ジョージ・ワシントン」(CVN-73)を視察しました。▶集合した米軍関係者を前に、両首脳は日米同盟の強化を力強く打ち出しました。場面によってはパフォーマティブな振る舞いも見られましたが、総じて「日米の結束」を可視化する演出だったと言えます。🔶 出発地はどこ?:赤坂プレスセンターという実体▶ 横須賀への移動に際し、両首脳は東京都内の米軍ヘリポートからヘリで発ちました。名称は赤坂プレスセンター。▶名称から報道施設を連想しがちですが、実体は米陸軍施設(通称:ハーディー・バラックス)で、所在地は東京都港区六本木です。六本木ヒルズの北側、国立新美術館の南側という都心のど真ん中に位置し、ヘリポートの騒音などから東京都・港区が返還を要請してきた経緯があります。▶ 返還の窓口は防衛省で、米側運用との調整が続いています。施設の性格上、返還見通しは容易でないのが現状です。🔶 空の見えない国境線:横田空域の基礎知識▶ 首都圏の空域には、在日米軍が航空管制を担う「横田空域」があります(一般に約2,400m〜7,000mの高度帯が言及されます)。▶民間機がこの空域を通過・設定する際には米軍の許可が必要となるため、羽田発着便はしばしば房総半島側へ回り込むルートを取ります。例えば熊本—羽田でも、進入・離脱時に遠回りが生じるケースがあります。▶ 横田空域は部分的な返還が段階的に進んできたものの、1960年の新日米安全保障条約期の枠組みが広く残存しています。「就任演説で『言うべきことは言う』とした以上、米国に対しても必要な論点は丁寧に提起すべきです。基地問題や日米地位協定の見直しなど、主権に関わるテーマだからです」(宮脇)🔶 まとめ:象徴と実務、二つの課題▶ 女性首相としての象徴性は強く、外交の可視化も進みました。▶ 一方で、赤坂プレスセンターや横田空域に象徴される戦後処理の未解決課題は依然として残っています。▶ 高市政権が「同盟の強化」と「主権的課題の改善」をどう両立させるか――ここが今後の評価軸になります。解説:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん聞き手:RKK・江上浩子

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日本初の女性総理・高市早苗内閣の船出  ――議員定数削減をめぐる“静かな火種”とは

日本初の女性総理・高市早苗内閣の船出 ――議員定数削減をめぐる“静かな火種”とは

日本初の女性総理・高市早苗内閣の船出 ――議員定数削減をめぐる“静かな火種”とは

第104代内閣総理大臣に就任した高市早苗氏。日本初の女性総理として歴史的な一歩を踏み出しました。しかし、その船出の裏では、日本維新の会との連立の条件となった「議員定数削減」が、政権の安定を左右する“火種”となりつつあります。元RKKアナウンサー・宮脇利充さんが、初の所信表明演説と世論の反応を読み解きながら、新政権の行方を解説します。🔶 女性初の総理誕生がもたらすインパクト▶ 10月21日、高市早苗自民党総裁が第104代内閣総理大臣に選出され、自民・日本維新の会の連立政権が誕生しました。▶ 「ガラスの天井を破った」と報じられた高市総理の誕生は、日本政治史における画期的な出来事です。「能力があっても性別を理由に昇進できない“ガラスの天井”。それを打ち破った象徴的な出来事です」(宮脇さん)▶ アメリカでは女性大統領がまだ誕生していない一方、イギリス・イタリア・北欧・台湾・ニュージーランドなどでは女性首脳が活躍しています。▶ 日本でもようやく、女性が国のトップに立つ時代を迎えたことになります。🔶 世論調査に見る「高市内閣」への期待と不安▶ 共同通信の調査(10月21〜22日実施)によると、高市内閣の支持率は64.4%。読売新聞の調査では71%と高水準でした。▶ さらに「高市総理の誕生が女性活躍を後押しするか」という問いには、「なる」35%、「どちらかといえばなる」42%で、計77%が期待を寄せています。「ロールモデルとしての存在感が大きい。『努力すれば女性でも国のトップになれる』という希望を持たせる効果があります」(江上さん)▶ 年代別では30代以下の若年層の79%が支持。▶ 一方で、60代以上の支持は55%にとどまり、年齢が上がるにつれて支持率が低下する傾向が見られました。▶ 性別では男性63%、女性66%と、女性の方が高い支持を示しています。🔶 所信表明演説の要点と“言及されなかったこと”▶ 10月25日午後2時、国会で行われた高市首相の所信表明演説(約30分)。▶ 青のジャケットに大粒のパールのネックレスを合わせ、自信に満ちた表情で登壇しました。演説の主な内容は次の通りです。▶ 積極的な財政出動・物価高対策▶ 熊本の**TSMC熊本(JASM/Japan Advanced SemiconductorManufacturing)を名指しした先端産業育成による経済成長戦略▶ 給付付き税額控除の導入▶ 科学技術投資とエネルギー安全保障▶ 女性特有疾患への医療拠点整備▶ 外国人受け入れ政策の見直し(排外主義ではない立場を強調)▶ 裁判の再審制度改革▶ 防衛費のGDP比2%**への前倒し実施「非常に盛りだくさんでしたが、あれほどの中で“議員定数削減”に触れられなかったのは気になりました」(宮脇さん)🔶 “連立の約束”議員定数削減はどこへ?▶ 議員定数削減は、日本維新の会が連立の条件として掲げた最重要項目です。▶ 現在、衆議院議員は465人(小選挙区289・比例代表176)。このうち**比例区を約50人削減(約1割)**する案が出ています。▶ 日本維新の会は「この国会で法案を議員立法で提出し、通らなければ連立離脱」と明言しています。「もし本当に提出されて可決されれば、小政党・中政党が大きな打撃を受けます。比例代表制はもともと多様な意見を国政に反映させるための仕組み。そこを削るのは筋が違うという声もあります」(宮脇さん)▶ 自民・維新両党にとっても議席減は避けられませんが、より深刻なのは少数政党。政治勢力の多様性が損なわれる恐れがあります。▶ 一方で、OECD(経済協力開発機構)加盟38か国中、日本の国会議員数は36位と“少ない方”。必ずしも「議員が多すぎる国」ではない現実もあります。「世論が強く求めているわけでもない。にもかかわらず削減を急ぐのは、政権運営上の駆け引きのようにも見えます」(宮脇さん)🔶 船出の順風と、静かな火種▶ 世論の7割が支持し、女性総理として高い注目を集めた高市政権。▶ しかし、議員定数削減という“連立の条件”が、早くも政権の安定に影を落としています。「日本維新の会が離脱すれば政権は一気に不安定化します。高市内閣がこの火種をどう処理するかが、今後の政治の焦点になるでしょう」(宮脇さん)出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん聞き手:江上浩子(RKK)

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子どもは社会の宝。だから“みんなで育てる”を本気で——阿蘇オフラインキャンプから見えた現実

子どもは社会の宝。だから“みんなで育てる”を本気で——阿蘇オフラインキャンプから見えた現実

子どもは社会の宝。だから“みんなで育てる”を本気で——阿蘇オフラインキャンプから見えた現実

「子どもは社会の宝です。多様な子どもたちを、社会全体で受けとめて育てていきたい——。」熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、病院と学校、地域が連携する“みんなで育てる”実践を語ります。阿蘇で実施された「オフラインキャンプ」を手がかりに、必要な配慮・人員・お金・時間を社会でどう支えるかを考えます。🔶 背景:「オフラインキャンプ」—ネットを離れ、自然の中で“生きる力”に触れる▶ 実施日:10月11日・12日(1泊2日)▶ 連携:向陽台病院の呼びかけで、玉名病院・県立こころの医療センターが協働▶ 参加:両病院に通院・入院経験のある小〜高生約20名程度+多数のスタッフ▶ 特徴:端末と離れ、自然体験に没頭する「オフライン」設計。ネット依存の傾向がある子も安心して参加できる支援体制を整備。▶ 位置づけ:田中校長が“言い出しっぺ”。今年で3回目、毎回現地参加。「3回連続で参加する子もいます。年に1度しか会わないのに、会うたびに成長がわかります。個性の強さはその子の魅力。配慮が必要なら、必要なだけ大人が寄り添えばいいのです」(田中校長)🔶 気づき:同じ「宝」でも、必要な支えは違う同じ施設には、サッカークラブの小学生チームも来ていました。大人の数は少なくても運営できる集団と、大人の数が子どもを上回るほどの支援が要る集団。どちらも社会にとって同じ「宝」ですが、求められる支援の量と質が違うという現実が浮き彫りになります。「“自分で生きていきなさい”では届かない子がいます。だからこそ、社会全体で受けとめる仕組みがいる。平等とは“同じやり方”ではなく、“必要なだけ支える”ことだと思います」(田中校長)🔶 病院間連携の意義:利益度外視でつくる“地域のチーム”▶ 同業の民間病院同士が手を組むのは、全国的にも珍しい取り組み。▶ 収益になりにくい活動でも「子どもの成長の機会」を優先して継続。▶ 「熊本はひとつ。Our Children(阿波チルドレン)」という理念のもと、医療・教育・地域が横断的に支援を続けています。「同じ地域の子どもたちを、みんなで見守っていく。この姿勢が熊本らしい温かさだと思います」(田中校長)🔶 学校現場のリアル:人・お金・時間が足りない▶ 授業中に座っていられない、指示が入りにくい——個別配慮が必要な子は確実に存在します。▶ 伴走には長い時間・人手・費用が欠かせません。▶ 例:学校代表として県大会に出る生徒の遠征費用が十分にまかなえず、経済格差が体験格差につながる懸念も。▶ 担任の心理的負荷も重く、教員のメンタル不調や離職志向の増加が課題に。「子どもや保護者、教員の“せい”にしても何も解決しません。必要な支援を社会で用意するしかない。効率や“コスパ・タイパ”では測れない世界です」(田中校長)🔶 “みんなで育てる”を進めるために:4つの提案▶ 1. 公的・民間の“プール”で体験機会を保障遠征・自然体験などの参加費用を、地域の基金や寄付で支える仕組みを整備。▶ 2. 学校外リソースの常態化学生ボランティアや退職教員など“第3の大人”を登録し、個別に寄り添う伴走員として配置。▶ 3. 医療・教育・福祉のワンチーム化病院・学校・福祉・NPOが定期的にケース会議を開き、切れ目のない支援を共有。▶ 4. 「配慮が要る子」前提の校内設計教室にセーフコーナーを設けるなど、**“同じであること”より“学びが届くこと”**を優先する設計へ。🔶 まとめ:宝を宝として扱う勇気を子どもは社会の宝です。その宝を宝として扱うには、時間・人・お金が要ります。効率では測れません。誰かの“努力不足”に帰すのではなく、社会全体の責任として支える——それが「みんなで育てる」の本当の意味です。「個性が強い子、配慮が必要な子は、社会にとっての大切な“多様性そのもの”。大人が数歩寄り添えば、その子の強みは必ず光ります」(田中校長)出演:熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗聞き手:江上浩子(RKK)

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君たちはどう備えるか ー今年も日本各地で自然災害が相次ぐー

君たちはどう備えるか ー今年も日本各地で自然災害が相次ぐー

君たちはどう備えるか ー今年も日本各地で自然災害が相次ぐー

🔶 頻発する異常気象、問われる“私たちの備え”今年も日本各地で大雨や台風などの自然災害が相次ぎました。熊本でも8月、そしてわずか1か月後の9月に再び大雨が発生し、各地で被害が報告されました。「もはや“ここでは起きない”という考えは通じません。私たちは自然の恵みと同時に、猛威にも向き合わなければならない時代に生きています」と語るのは、ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんです。🔶 “情報難民”になった朝――突然の落雷被害斉場さんが特に印象的だったと語るのが、9月10日の朝。熊本に線状降水帯が発生し、夜明け前から雷と豪雨に見舞われました。「朝、テレビをつけていたら突然映らなくなったんです。停電ではなく、ケーブルテレビの機器が落雷で壊れてしまっていました。照明も点くし電気も通っているのに、情報だけが途絶えてしまった。まさに“情報難民”状態でした」テレビが見られなくなり、地域の最新情報を得られない不安の中、斉場さんが頼ったのはラジオでした。「こういうときこそ、地元局の放送が命綱になります。RKKラジオでは、通常番組を変更して気象情報を伝えてくれた。そこでようやく“雨はまだ続く、雷も収まらない”という現状を知ることができました」しかし、この経験から痛感したのは「放送局から『危険です』と伝えられたときには、すでに自分の地域は危険な状態にある」という現実でした。🔶 “危険情報”が出る頃には、すでに危険は始まっている災害が発生するスピードが年々早まっています。「近年は、雨が降り始めてから短時間で被害が出るケースが多くなりました。『備える間もなく水が来た』という声をよく耳にします。じわじわと増水するのではなく、短時間で一気に状況が変わる。これが今の災害の特徴です」そのため、斉場さんは「放送が通常編成のうちに動くことが命を守る第一歩」と強調します。「テレビやラジオが『危ないです』と言い始めた時点では、もう逃げ遅れている可能性がある。だからこそ、番組が普通に進行しているうちに、私たちは準備を始めなければいけません」🔶 “君たちはどう備えるか”――3つのヒント斉場さんは、自身の経験をもとに“命を守るための3つの備え”を挙げました。1️⃣ 複数の情報入手手段を持つこと「テレビが壊れても、ラジオがあれば助かる。スマートフォンが充電切れでも、乾電池式ラジオがあれば情報は得られます。携帯の充電をこまめに行うことも大切です」2️⃣ 小さな変化に“早めに気づく”こと「気象情報のコーナーで“少し注意が必要”と伝えられた時点で、自分事として捉えること。『どうせ大したことはない』と流すのではなく、最悪の可能性も考えておく。普段から天気予報やニュースを“ながら聞き”しておくことが大切です」3️⃣ 安心ではなく“不安”を探すこと「人はどうしても“安心したい”と思ってしまいますが、災害時は逆です。『この台風は九州の西を通るから大丈夫』ではなく、『もし進路が変わったら?』と不安要素のほうを意識して行動する。それが命を守る備えにつながります」🔶 “最悪を想定する勇気”が命を守る「安心を探す行動は、人間として自然なことです。でも、災害の前では“最悪のシナリオ”を想定して動く勇気が必要です」と斉場さんは語ります。「いつ起こるかわからないからこそ、今から備えておく。行動を1時間、いや10分でも早くすることで、助かる命があると思っています」まとめ大雨、地震、台風――いつどこで災害が起きてもおかしくない時代。情報を受け身で待つのではなく、自ら取りにいくこと。そして「安心ではなく不安を探す」という意識の転換こそが、これからの私たちに求められている備え方です。「君たちはどう備えるか」その問いは、決して他人事ではありません。🗣️ お話:ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん🎙️ 聞き手:江上浩子(RKK)

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10月公開の必見映画3選――芸術・将棋・サスペンスの世界へ

10月公開の必見映画3選――芸術・将棋・サスペンスの世界へ

10月公開の必見映画3選――芸術・将棋・サスペンスの世界へ

🔶 『おーい、応為』(10月17日公開)👉 公式サイトはこちら https://oioui.com/今月最初のおすすめは、浮世絵師・葛飾北斎の娘、葛飾応為(お栄)を描いた作品『おーい、応為』です。主演は長澤まさみさん。父・北斎を演じるのは永瀬正敏さんです。長澤さん演じる応為は、豪快で少し乱暴な言葉遣いながらも、繊細な筆致を持つ絵師。その姿は、芸術家としての葛藤と親子の絆を鮮やかに映し出しています。北斎役の永瀬さんも、重厚かつ人間味あふれる演技で、芸術家親子のせめぎ合いを力強く表現しています。監督は『日日是好日』で知られる大森立嗣さん。人間ドラマを丁寧に描く手腕が、本作でも発揮されています。特徴的なのは、時代劇でありながら西暦表記を用いるなど、一見すると意表を突く演出が盛り込まれている点です。また、劇中で応為が拾ってきた犬が引っ越しの度に荷車に座り続け、少しずつ成長していく姿で年月の流れを表現するなど、細部にまで工夫が光ります。女性浮世絵師として先駆的な存在であった応為の生きざまは、時代を超えて強い共感を呼ぶでしょう。🔶 『盤上の向日葵』(10月31日公開)👉 公式サイトはこちら https://movies.shochiku.co.jp/banjyo-movie/次にご紹介するのは、柚月裕子さん原作のベストセラー小説を映画化した『盤上の向日葵』です。主演は坂口健太郎さん。さらに渡辺謙さん、小日向文世さん、佐々木蔵之介さん、土屋太鳳さんら豪華キャストが出演しています。物語は、身元不明の白骨死体が発見される事件と、天才棋士の波乱の人生が交錯しながら展開します。坂口さん演じる青年棋士は、苦難の中で才能を開花させ、将棋の世界で頂点を目指す姿を見せます。師匠役として、小日向さんが温かく支える存在を、渡辺謙さんが賭け将棋の名人として迫力ある演技を披露。二人の対照的な師弟関係が物語に厚みを与えています。サザンオールスターズによる主題歌「暮れゆく街のふたり」です。映画内で口笛として繰り返し登場し、切なさと哀愁を伴う旋律が物語を彩ります。人間ドラマとしてもミステリーとしても、強く心に残る作品です。🔶 『爆弾』(10月31日公開)👉 公式サイトはこちら https://wwws.warnerbros.co.jp/bakudan-movie/同じく10月31日に公開される『爆弾』は、サスペンス性あふれる一作です。主演は山田裕貴さん。共演に佐藤二朗さん、伊藤沙莉さん、染谷将太さん、渡部篤郎さんらが名を連ねています。物語は、酔っ払いとして取り調べを受けていた男が、突如「これから爆発が起きる」と予言。その言葉通りに連続爆破事件が発生していくという緊迫の展開です。佐藤二朗さんが演じる謎の男は、不気味さと狂気を併せ持ち、物語の中心で強烈な存在感を放ちます。刑事役の渡部篤郎さんは、佐藤さんとの対峙を通じてベテラン俳優としての重みを示しています。原作は呉勝浩さんの小説『爆弾』。江戸川乱歩賞を受賞した傑作ミステリーで、俳優陣も「原作の重みを背負って挑んだ」と語るほどの緊張感あふれる撮影となったそうです。緻密な構成と息詰まるサスペンスが、観る者を圧倒するでしょう。⭐まとめ10月は、芸術と親子の絆を描く『おーい、応為』、将棋と人生を交錯させた重厚な人間ドラマ『盤上の向日葵』、そして狂気と予言に翻弄されるサスペンス『爆弾』と、濃厚なラインナップが揃っています。それぞれに異なるジャンルながら、観る人の心に強く響く作品です。映画解説研究者の上妻祥浩さんによる推薦でした。ゲスト:上妻祥浩/聞き手:江上浩子(RKK)

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思い込みが社会を揺らすとき――政治発言とSNS拡散を読み解く

思い込みが社会を揺らすとき――政治発言とSNS拡散を読み解く

思い込みが社会を揺らすとき――政治発言とSNS拡散を読み解く

本日のテーマは「思い込み」です。政治家の発言やSNS上の情報が、根拠の不確かな“印象”や“思い込み”と結びついたとき、社会にどのような影響が生まれるのか――宮脇利充さんが具体例を手がかりに考え方の整理を提案します。🔶 奈良の鹿をめぐる発言――根拠はどこにあるのか総裁選の所見表明で取り上げられた「奈良の鹿」への迷惑行為を起点に、訪日客への規制強化を訴える発言が注目を集めました。一方で、管理当局側は“暴力行為の確認なし”との説明をしており、両者の主張に隔たりが見られます。宮脇さんは「政治家の言葉は社会に与える影響が大きい。事実関係を丁寧に示す姿勢が欠かせません」と指摘します。ポイント“見聞きした話”や“体感”が、統計や公式確認より先行すると誤解が広がりやすくなります。とくに移民・観光・治安など感情を刺激しやすいテーマでは、印象の増幅に注意が必要です。🔶 通訳不足で「不起訴」?――現場との食い違い同じ場で語られた「通訳確保が間に合わず不起訴」という趣旨の言及についても、実務側からは「そのような事例は把握していない」とする説明が紹介されました。宮脇さんは「データや事例提示なく『よく聞く』という言い方は、誤った前提を固定化しかねません」と述べ、エビデンス提示の重要性を強調します。🔵ポイント * 司法・警察運用には手続きの上限や代替手段が整備されているケースが多く、“印象ベース”の断定は慎重に。 * 発言者の立場が高位になるほど、聞き手は“事実”として受け取りやすく、言葉の重みが増します。 🔶 JICA「アフリカ・ホームタウン」構想と誤情報拡散国際交流を目的とした取り組みが「移民定住制度」と誤解され、自治体や機関に大量の抗議が殺到した一件も紹介。公式の否定が繰り返されても、SNS上の“確信”が抗議行動を持続させる構図が浮き彫りになりました。🔵ポイントSNSのアルゴリズムは、自分の確信を補強する情報を“集めて並べる”傾向があり、偏りに気づきにくくなります。公式ソースの一次情報(発表資料・FAQ・窓口)を確認する「逆引き」習慣が、誤拡散のブレーキになります。🔶 スポーツの国際舞台に見る“リスペクト”の回路世界陸上のように、国籍や背景を超えて互いの努力を讃える場面がある一方で、SNSでは“敵/味方”の二分法が加速しがちです。宮脇さんは「同じ“世界を見る”でも、接し方次第で態度は大きく変わる。まず落ち着くこと、そして確かめることが出発点です」と呼びかけます。🔶 今日はここを持ち帰る:思い込みに飲み込まれない5つの習慣出所を見る:誰が、いつ、どの立場で述べた情報かを必ず確認します。一次情報に当たる:記事なら元資料、発言なら全文・動画・逐語をチェックします。反証を探す:賛成の根拠だけでなく、反対の根拠も並べて比較します。数と手続き:統計・制度・運用の“仕組み”を確認し、個別体験の一般化を避けます。言葉の重み:影響力のある人の発言は“事実”として流通しやすい――受け手も発信側も自覚します。「確かめて、落ち着いて、考える。思い込みの速度を、いったん緩めましょう」(宮脇利充)🔶 まとめ政治の場でもSNSの空間でも、“印象”が“事実”を上書きすると、社会の議論は荒れやすくなります。大切なのは、根拠を確かめる手間と、違う意見に耳を澄ます余裕です。宮脇さんは「自分の中の思い込みにも光を当てたい」と結びました。出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん/聞き手:江上浩子(RKK)

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家庭と学校の“協育”をもう一度――PTAの価値とこれから

家庭と学校の“協育”をもう一度――PTAの価値とこれから

家庭と学校の“協育”をもう一度――PTAの価値とこれから

🔶 テーマの背景:教育は学校の“専売特許”ではありません田中慎一朗校長は「教育は、家庭と学校が一緒に子どもを育む営みです」と強調します。市教育委員会内では先月、「家庭と学校の連携について考える会」(PTAのあり方を含む)が発足し、田中校長も委員として参加しています。第1回会合では、現役PTAや学校現場の声を交え、今後の方向性について議論が始まったところです。🔶 いまPTAに起きていること:加入率低下と“休止化”近年、PTAの加入率は下がり、学校によっては活動が休止状態という例も見られます。前提としてPTAは任意団体であり、加入の有無で子どもが不利益を受けてはならない――これは大前提です。そのうえで田中校長は、「PTAは学校と家庭をつなぐ、大切な“橋”であり続けてきました。なくなることで失われる機能は小さくありません」と指摘します。🔶 PTAの“3つの機能”:なくして気づく基盤インフラ1. 共助機能(助け合い・ピアの支え) * 大会遠征や活動に伴う費用の一部補助など、会費を原資に“いざ”というときの支えになります。 * 経済的支援だけでなく、悩みや不安を分かち合うピア(同じ立場)コミュニティとして機能します。転入直後など、相談先が見つけにくい家庭の受け皿にもなります。 2. 監督機能(監視ではなく“モニタリング”) * 学校は「子どものため」を軸に全力で動きますが、ときに“思い”が先行して硬直化することもあります。 * PTAは保護者代表として、行事や運営、学習・生活指導の進め方に建設的な意見を出し、学校と対等な立場で改善を促す存在です。 * 個別の苦情が“全体の声”なのかを確かめる手続き(集約・合議)を担い、校長や学校側の相談相手(セーフティネット)になります。 3. 教育機能(“教える”から“共に育てる”へ) * 強い一方通行の指導が通りにくい今こそ、学校と家庭が“指導の一貫性”を共有し、共に育てる体制が不可欠です。 * 学校ツアーや校内観察、職業講話・体験(キッザニア型企画)など、PTAが“学びの場”を開発・運営することで、地域ぐるみの学びが広がります。 * 出水南中では、PTA活動が評価され文部科学大臣表彰を受けるなど、機能の可視化にも結びついています。 「PTAは“学校の下部組織”ではありません。保護者の代表として、学校と“対等に”子どもたちの最善を考えるパートナーです」(田中校長)🔶 誤解されがちなポイント:任意加入と“公平”の両立 * 任意加入は不変:加入しないことによる不利益はあってはなりません。 * 組織の透明性がカギ:会計・意思決定・役割分担を“見える化”することで、非加入の理由(負担感・不透明感)を減らせます。 * “関わりやすい小さな参加”を用意:ワンショットのボランティア枠、オンライン会合、タスク細分化で参加障壁を下げます。 🔶 出水南中の実践アイデア(再現可能なヒント) * 学校ツアー&コメントバック:保護者目線の気づきを学校へ“伴走フィードバック”。 * 職業講話・体験デー:保護者の専門性を学びに変換、キャリア教育の共同設計。 * 三者パートナー会議:生徒会長×PTA会長×校長が同じテーブルで、校内課題を“協議→合意→実装”。 🔶 これからのPTAデザイン:5つの提案 1. ミッション再定義:「子の最善の利益」を憲章化し、活動を“目的ドリブン”に。 2. 役割のマイクロ化:1時間・単発・オンラインOKの“小さなジョブ”を量産。 3. 情報のオープン化:議事録・予算・効果測定を簡潔にWeb共有。 4. 合議の仕組み:個別意見→PTAで集約→学校へ提案の標準ルートを整備。 5. 評価と表彰:関わりの可視化(バッジ・感謝状・SNS紹介)でモチベーションを回す。 🔶 まとめ:PTAは“なくすか/残すか”ではなく、“進化させる”田中校長は、「PTAは学校にとって“良き友人”です。時に支え、時に諫め、共に育てる。いま必要なのは“今のまま”ではなく、“これからの形”を共に考えることです」と結びました。教育は学校だけでは担いきれません。家庭と学校、そして地域が“協育”の視点で手を結ぶとき、子どもたちの学びと安心は確かなものになります。出演:熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さん聞き手:江上浩子(RKK)

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あの渋滞を減らすのはあなた ― 熊本の交通課題と解決への道

あの渋滞を減らすのはあなた ― 熊本の交通課題と解決への道

あの渋滞を減らすのはあなた ― 熊本の交通課題と解決への道

🔶 熊本の渋滞、道路整備だけでは解決できない課題週末の夕方、多くの人が車の中で渋滞に巻き込まれています。熊本でも道路整備は進んでいますが、渋滞解消にはなかなかつながっていません。西環状道路の開通もありますが、便利になれば車が集中し、結果的に渋滞が増えるという“いたちごっこ”の状況です。この現実を踏まえ、熊本県は「道路を作れば解決」という発想だけでなく、民間と協力して取り組む仕組みを導入しました。🔶 熊本県渋滞対策パートナー登録制度の取り組み県は今年5月から「熊本県渋滞対策パートナー登録制度」をスタートしました。これは、時差出勤・テレワーク・公共交通の利用など、企業が主体的に渋滞解消に取り組むことを促す制度です。登録企業にはロゴマークが交付され、「渋滞対策に取り組んでいる企業」であることを示せます。8月29日時点で、264の事業者が登録済みです。ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが率いる「さいばーとれいん」も登録第1号企業として名を連ねています。🔶 AIで見えた登録企業の傾向斉場さんは、県が公開している登録企業データをAIで独自に分析しました。その結果、製造業や事務系の職種が多く登録していることが判明しました。これらの企業は「9時始業・17時終業」といった時間帯が固定されやすいため、時差出勤やリモートワークに取り組みやすい傾向があります。一方、小売業など「顧客が来店する時間に合わせざるを得ない業種」は、登録が少ないという特徴も見られました。🔶 行政に求められること行政に対しては「車を使わない選択肢を提供してほしい」と斉場さんは語ります。熊本市内は自転車移動もしやすい一方で、自転車専用レーンや着替えの設備が少なく、ビジネス利用には課題があります。バスは本数が少なく遅れも多いため、利用者が安心して乗れる環境整備が必要です。🔶 事業者への提案 ― 配送や集客の工夫企業には「車を使わない工夫」を求めたいと斉場さん。例えば、配送時間を朝の渋滞時間帯から夜間にシフトさせる取り組みや、大型店舗での「催事渋滞」への対策として、混雑する時間帯ではなく空いている時間帯に来店した顧客へ特典を与える仕組みも考えられます。駐車場料金の差別化なども一案です。🔶 県民一人ひとりにできること渋滞に巻き込まれることは「時間とお金の損失」だと斉場さんは指摘します。車の中で動けずに費やす時間は失われた人生の一部であり、ガソリン代も無駄になります。スーパーで1円単位の節約を考えるのと同じように、「渋滞を避ける工夫」も個人が取り組むべき課題です。公共交通を使える場面では積極的に使うことも重要です。🔶 まとめ ― 渋滞解消は“あなた”から始まる熊本県の「渋滞対策パートナー登録制度」は9月いっぱい、企業の登録を受け付けています。制度に限らず、行政・企業・そして県民一人ひとりが意識を変えることで渋滞は減らせるはずです。「渋滞を減らすのは、あなた」この言葉が示すように、解決の第一歩は身近な行動の見直しから始まります。出演:ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん聞き手:江上浩子(RKK)

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今月の映画おすすめ3選――記憶と現在、極限のサバイバル、そして“炎上”の向こう側

今月の映画おすすめ3選――記憶と現在、極限のサバイバル、そして“炎上”の向こう側

今月の映画おすすめ3選――記憶と現在、極限のサバイバル、そして“炎上”の向こう側

終戦から80年の節目を過ぎ、いま観るべき3本が揃いました。カズオ・イシグロの長編デビュー作を原作にしたミステリアスな人間ドラマ、実話ベースの深海サバイバル、そしてSNS時代の「無実の加害者」を描くサスペンス。内容の重さは異なりますが、どの作品も“いま”を考えさせてくれます。🔶遠い山なみの光(9月5日公開)👉 公式サイト:https://gaga.ne.jp/yamanami/イシグロ文学の“余白”がスクリーンでささやく。1980年代のイギリス。日本人女性(吉田羊)のもとを、疎遠だった娘が訪ねてきます。物語はそこから1950年代の長崎へと行き来し、若き日の彼女(広瀬すず)と、謎めいた女性(二階堂ふみ)との出会いが、静かな緊張を帯びてほどけていきます。原爆後の街の空気、家族や婚姻、義家族(三浦友和が印象的)との関係──“語られないこと”が語る、イシグロらしい余韻が核です。見どころ * 1980年代ロンドンと1950年代長崎を織り交ぜる構成が生む“捉えどころのなさ”。 * 広瀬すず×二階堂ふみ、対照と共鳴で進む女性同士の心理線。 * 「本当は何が起きたのか」を観客に委ねるミステリー性。 上妻さん評:「丁寧に観た人ほど“あ、そうか”が積み上がります。見終わって語り合いたくなるタイプの1本です」🔶ラスト・ブレス(9月26日公開)👉 公式サイト:https://lastbreath.jp/深海の限界時間、酸素メーターは容赦なく減っていく。スコットランド沖。海底パイプラインの修理任務中、支援船のトラブルで潜水士の1人が海底に取り残されます。残り酸素はわずか──船上と海中のチームが総力戦で挑む、実話ベースの“タイムリミット・サスペンス”。事故のドキュメンタリーを手がけた監督による劇映画化で、実際の船・技術・手順に基づく描写が緊迫感を跳ね上げます。見どころ * 飽和潜水の手順や機材運用をリアルに再現。 * 「最後の一呼吸」へ収斂する編集と音。 * 海の暗闇と狭小空間が作る極度の没入感。 上妻さん評:「予告だけで手汗。『助かるのか?』が全編を貫きます」🔶俺ではない炎上(9月26日公開)👉 公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/oredehanai-enjo/“加害者にされた日”は、誰の明日にも起こりうる。普通のサラリーマン(阿部寛)が、SNSで殺人犯と名指しされます。拡散、特定、断罪。正義を名乗る群衆の暴走に、生活も人間関係も崩れていく──ヒッチコック譲りの“巻き込まれ型”を、現代日本のネット空間に移植。夏川結衣、芦田愛菜の存在感も濃く、特に芦田の啖呵は物語の芯を震わせます。冤罪スリラーでありつつ、それだけでは終わらない“もう一歩深い”問いを投げてきます。見どころ * 阿部寛の“普通さ”が恐怖を増幅。 * 夏川結衣・芦田愛菜ほか脇の芝居が熱い。 * 「発信する側」の責任を観客に返す構造。 上妻さん評:「SNSの怖さが主題ですが、そこに留まらない。ネタバレ厳禁、劇場で確かめてください」ゲスト:上妻祥浩/聞き手:江上浩子(RKK)

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ブレイディみかこ『女たちのポリティクス』と現在の政治状況 大阪万博の話も

ブレイディみかこ『女たちのポリティクス』と現在の政治状況 大阪万博の話も

ブレイディみかこ『女たちのポリティクス』と現在の政治状況 大阪万博の話も

🔶 先週の続き――紹介できなかった一冊宮脇利充さんが先週紹介しきれなかった本、『女たちのポリティクス』(ブレイディみかこ著、幻冬舎新書、2021年刊)。刊行から4年が経っていますが、現代の政治状況と不思議なほど呼応する内容を含んでいます。著者ブレイディみかこさんは福岡市生まれ、イギリス在住のライターであり保育士。『僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で知られ、英国社会のリアルを等身大で描く筆致で注目を集めました。*女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち (幻冬舎新書)/ブレイディ みかこ (著)🔶 フェミニズムとナショナリズムの危うい結合同書の中で注目すべき章の一つが「小池百合子とフェミニズム」です。ここでブレイディさんは、ヨーロッパにおける「フェモナショナリズム(フェミニズム+ナショナリズム)」を紹介します。イスラム過激派による女性の権利抑圧に抗議するフェミニストの声が、極右ナショナリストに利用され、排外主義へと転化する構図です。ブレイディさんは、この枠組みを日本に置き換え、「ムスリム男性」を「おっさん政治」として捉えるべきだと提起します。共通の敵を設定して攻撃することで人気を得るのは、典型的なポピュリストの手法。短期的には憂さ晴らしになっても、長期的には自らの首を絞める危険性を孕んでいると警鐘を鳴らします。🔶 日本政治と「おっさん政治」批判宮脇さんは、直近の参議院選挙を振り返り、既成政党への不満から新興勢力に投票が流れる傾向を指摘しました。ただし、そこには理念や政策の根本的な相違を見極めず、「とにかく既存政治への対抗」として票が動く危うさが潜んでいると警戒します。🔶 小池百合子都知事と関東大震災追悼文問題「小池百合子とフェミニズム」の章ではもう一つ、関東大震災(1923年)後に起きた朝鮮人虐殺の追悼文問題に触れられています。歴代東京都知事が追悼文を寄せてきた中で、小池都知事は2017年以降、一度も寄せていません。9月1日、関東大震災から102年を迎える追悼集会で、小池知事が追悼文を再び寄せるのか、あるいは8年連続で見送るのか――政治家としての姿勢が問われています。🔶 万博が映す「国の顔」さらに宮脇さんは、大阪・関西万博を訪れた体験も語りました。各国パビリオンは「お国自慢」が中心で、文化や資源の豊かさを前面に出しています。しかし宮脇さんが求める「その国の課題や矛盾」といったネガティブな情報はほとんど見られませんでした。日本館は「持続可能な社会」をテーマに、会場内の廃棄物を燃料に電力を生み出す仕組みを展示。また、隣接するカルティエがサポートするウーマンズ パビリオンも注目されており、「フェミニストも非フェミニストも訪れる価値がある」と宮脇さんは強調しました。話し手:宮脇利充(元RKKアナウンサー)/聞き手:江上浩子(RKK)

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世界の女性リーダーを描くブレイディみかこ『女たちのポリティクス』を読む

世界の女性リーダーを描くブレイディみかこ『女たちのポリティクス』を読む

世界の女性リーダーを描くブレイディみかこ『女たちのポリティクス』を読む

🔶 図書館で出会った一冊宮脇利充さんが図書館で偶然手に取った『女たちのポリティクス』(幻冬舎新書/2021年刊)を紹介します。刊行から4年が経ったいまも、内容は現在の政治状況に通じる示唆に富み、時間を超えて読ませる一冊だといいます。🔶 ブレイディみかことは誰か著者のブレイディみかこさんは1965年福岡市生まれ。イギリス・ブライトン在住のライターで、保育士としての経験も持ちます。代表作『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(2019年)は、英国の多様性や教育現場を等身大に描いて高く評価されました。🔶 世界の女性リーダーたちが照らす政治の現在地本書は、メルケル(独)、スタージョン(スコットランド)、蔡英文(台湾)、アーダーン(NZ)など各国の女性リーダーを取り上げます。コロナ禍対応で成果を上げた国々の分析を通じ、「女性だから」ではなく「ずば抜けて優秀だから」トップに押し上げられたという、ジェンダーを超えた資質論が示されます。決断の速さや推進力、的確な優先順位付けなど、危機下で光るリーダーシップの共通項が浮かび上がります。🔶 日本のジェンダーギャップと政治分野の遅れ世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数で日本は依然として下位に位置し、とりわけ政治分野の遅れが目立ちます。4年を経ても構図が大きく変わらない現状に、本書の示唆はなお有効だと宮脇さんは語ります。🔶 小池百合子と“フェモナショナリズム”「小池百合子とフェミニズム」の章では、政治信条の一致・不一致を超えて支持が集まる背景を「フェモナショナリズム(フェミニズム×ナショナリズム)」という概念で読み解きます。女性の権利を政治的手段として利用する動きは欧州右派の女性リーダーにも見られ、日本文脈では“おっさん政治”への反発が特定勢力を利する危うさにも注意を促します。🔶 いま読む意義――「性別より資質」を見抜く眼コロナの記憶が薄れつつある今こそ、本書は危機下の統治に必要な資質を思い出させます。女性か男性かではなく、難局で結果を出せる資質を持つ人物を選べているか――有権者の視点が問われている、と宮脇さんは結びます。話し手:宮脇利充(元RKKアナウンサー)聞き手:江上浩子(RKK)〇書籍情報書名:『女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち』著者:ブレイディみかこ出版社:幻冬舎新書(2021年刊)URL:https://amzn.to/45Qa99y〇ジェンダー・ギャップ指数日本の順位:118位/148か国(2025.6.12発表)内閣府男女共同参画局

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不確実な中にとどまる力──熊本市立出水南中学校・田中慎一朗校長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」と教育の営み

不確実な中にとどまる力──熊本市立出水南中学校・田中慎一朗校長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」と教育の営み

不確実な中にとどまる力──熊本市立出水南中学校・田中慎一朗校長が語る「ネガティブ・ケイパビリティ」と教育の営み

お盆の時期、熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、教員生活の原点を思い起こさせる出来事を経験しました。新任時代の教え子たちが帰省に合わせて集まり、同窓会のような再会の場を設けてくれたのです。「当時の生徒たちはやんちゃで、バイクを乗り回したり、体育館の袖でタバコを吸ったりと、毎日が戦いでした」と田中校長は振り返ります。当時は新任教師として必死に指導しても、反発ばかりでわかり合えたとは言い難い日々。それでも田中校長は、教え子たちのそばを離れず、関わり続けました。🔶“先生と飲みたい”と言われた瞬間再会した教え子のひとりはこう語りました。「大人になって、一緒に飲みたい先生と、そうでない先生がいます。田中先生は会いたいと思える先生でした」この言葉に、田中校長は胸を打たれたと言います。当時は反抗期真っ只中でふてくされていた生徒たちも、大人になって改めて“そばにいてくれた存在”の意味を感じていたのです。🔶教育は結果がすぐ出ない営み田中校長は、この経験から「ネガティブ・ケイパビリティ」という言葉を想起しました。直訳すれば「否定的能力」ですが、ここでいう“ネガティブ”とは悲観ではなく、「不確実な状態にとどまり続ける力」を意味します。もともとは英国の詩人ジョン・キーツが、劇作家シェイクスピアの作風を評する中で友人に宛てた手紙に登場した言葉です。勧善懲悪ではなく、人間の多面性や曖昧さを描ききる力。それを後世の人々が教育や医療、福祉など幅広い分野で引用するようになりました。🔶結果を急がず“揺れ”に寄り添う教育現場でも、子どもの行動や態度はすぐに変わるとは限りません。「不登校や望ましくない行動に直面すると、すぐに解決策を探し、成果を求めたくなります。しかし、うまくいく時もあれば、そうでない時もある。その“揺れ”に寄り添い、関わりを止めないことが大切です」と田中校長は語ります。これは子育てにも通じます。親は結果をゴールに据えがちですが、子どもはそれぞれのタイミングで変化します。表面には出なくても、心の中では少しずつ反応や変容が起きているのです。🔶“居続ける”ことが信頼を生む新任時代、田中校長は結果が見えなくても、反発や嘘に直面しても、生徒のそばを離れませんでした。その姿勢が、後年「信用してみようと思ったきっかけだった」という生徒の言葉につながります。「教育技術が特別にあったわけではありません。関心を持ち続け、居続けること。それが最終的に子どもの心に届いたのだと思います」と田中校長。🔶不確実性に耐える力が今こそ必要現代社会は「すぐ結果を出さなければ」という焦りに駆られやすく、うまくいかないとイライラしてしまうことも少なくありません。「だからこそ、不確実な中にとどまり続ける力が必要です。教育も子育ても、営みそのものが大切なのです」と田中校長は力を込めます。出演:熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗聞き手:江上浩子

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終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実

終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実

終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実

終戦80年──「核武装論」がSNSで呼び起こした議論と2つの現実原爆投下から80年の節目を迎えた今年、熊本市の大西一史市長がSNSに投稿した一言が、日本社会に大きな波紋を広げました。核兵器をめぐる賛否両論、そしてその先に見えてきた“2つの現実”についてお伝えします。🔶発端は1つのSNS投稿です今年7月8日、アメリカのトランプ前大統領が原爆投下を正当化する発言を行いました。これに対し、大西市長はX(旧Twitter)で「核兵器をなくすことは、政治家としても人間としても、私たちの責務だと強く思っています」と投稿しました。この投稿は28万5千回以上閲覧され、多くの賛同と同時に反対意見も巻き起こしました。賛同派は「日本こそ核廃絶を訴えるべきだ」とし、反対派は「時代が変わった今、日本も核武装して国を守るべきだ」と主張しました。🔶再びの発信、そして拡大する反響です大西市長は7月21日、「あらためて言わせてもらって、よかですか?」という言葉で始まる投稿を行いました。そこでは、「日本が核兵器を持つことは、法的にも現実的にも人道的にもできません」「核に頼らない世界を実現することこそ、日本に求められる本当の強さです」と明確に表明しました。この2度目の投稿は848万回以上閲覧され、「いいね」は9万5千件、リツイートは2万8千件に達しました。現職の政治家がSNS上でここまで強い立場を公にすることは珍しく、反響の大きさを物語っています。🔶現職政治家の発信が持つ意味ですライブ配信ディレクターの斉場俊之さんは、この発言について「市長という肩書きだけでなく、一人の政治家として譲れない思いを示した。政治家が自らの言葉で立場を明確にすることは、SNS時代において非常に意義がある」と語ります。現職の政治家は支持層や立場への配慮から、賛否を分けるテーマへの発言を避けがちです。しかし今回、大西市長はその“踏み込まなさ”の壁を越えました。🔶賛否を分けた「2つの現実」です斉場さんは、大西市長の発信によって2つの現実が可視化されたと指摘します。 1. 核のない世界という理想は追い続けるべきものであること 2. 国際社会の摩擦や対立の中で、安全保障のための力を求める現実があること 「誰も核兵器を“良いもの”とは思っていない。なくせるならなくしたい。ただし世界情勢の中で『持たなければ守れない』という意識も根強いです」と斉場さんは話します。🔶避けて通れない議論です核兵器をめぐる議論は、平和な日常の中では意識されにくいものです。しかし、現実的な安全保障を考えれば避けて通れないテーマです。「重要なのは、この議論が分断を生まないことです。互いを否定し合うのではなく、異なる立場からより良い答えを探ることが大切です」と斉場さんは強調します。🔶SNSが議論の場になる時代ですSNSは時に“石の投げ合い”の場になりますが、それでも多様な意見を交わす貴重な空間です。スマートフォン1つで誰もが平和について語り合える場でもあります。「小さな声でも集まれば大きな力になります。自由で多様な意見交換の中から、未来に向けた新しい答えを見つけていきたいです」と斉場さんは語ります。出演:ライブ配信ディレクター 斉場俊之聞き手:RKKアナウンサー 後生川凜

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終戦80年の夏に観る、心を揺さぶる3本の話題作~「長崎~閃光の影で~」「入国審査」「ジュラシックワールド/復活の大地」

終戦80年の夏に観る、心を揺さぶる3本の話題作~「長崎~閃光の影で~」「入国審査」「ジュラシックワールド/復活の大地」

終戦80年の夏に観る、心を揺さぶる3本の話題作~「長崎~閃光の影で~」「入国審査」「ジュラシックワールド/復活の大地」

終戦80年の夏に観る、心を揺さぶる3本の話題作🔷 若き命が見た“地獄”──『長崎 ~閃光の影で~』2025年の今年、終戦から80年を迎える8月に、戦争の記憶を呼び起こす1本の映画が公開されました。『長崎 ~閃光の影で~』(8月1日公開)は、原爆投下直後の長崎で、負傷者の救援に奔走した3人の看護学生の手記をもとに描かれた実話ベースの作品です。爆心地にほど近い町で、それぞれの家族の安否もわからぬまま、命の現場で懸命に働いた10代の少女たち。助けられる命と、救えなかった命のはざまで葛藤し、泣きながらも成長していく姿が丁寧に描かれています。主演は若手実力派女優・菊池日菜子。彼女のインタビューでは、鋭い思考力と深い感受性が光っており、23歳とは思えない成熟した言葉に驚かされました。演技にもその深みが感じられます。監督は長崎出身の松本准平。自身の故郷への想いと、世代を越えて語り継がれるべき記憶を、映像として見事に再現しています。▶︎公式サイトはこちら👉 https://nagasaki-senkou-movie.jp/🔷 空港の密室で試される“ふたり”の真実──『入国審査』同じく8月1日に公開された『入国審査』は、心理的な緊迫感が支配するサスペンス映画です。舞台はトランプ政権下のアメリカ。スペインから移住を試みた若いカップルが、ニューヨークの空港で思わぬ事態に直面します。入国審査の場で突如、別室に連れて行かれた2人。そこで待ち受けていたのは、次々とプライバシーに踏み込む質問の嵐。やがて、互いに隠していた事実や本音が浮かび上がり、2人の関係性が静かに揺らいでいきます。上映時間はわずか77分。にもかかわらず、詰め込まれた内容の密度と心理描写の鋭さには圧倒されるほどです。実際に監督自身が入国審査で経験した理不尽さをもとにした作品ということで、そのリアリティにも注目が集まっています。▶︎公式サイトはこちら👉 https://movies.shochiku.co.jp/uponentry/🔷 恐竜、再び。陸・海・空で繰り広げられる壮大な冒険──『ジュラシックワールド/復活の大地』この夏、親子で楽しめる超大作として注目されているのが、『ジュラシックワールド/復活の大地』(8月8日公開)です。シリーズ通算7作目にあたる本作は、原点回帰ともいえる展開が魅力。舞台は初代『ジュラシックパーク』の島。心臓病の新薬開発に必要な恐竜のDNAを採取するという極秘ミッションを背負った女性工作員と科学者たちが、未知の恐竜世界に挑みます。注目は、陸・海・空すべての環境に生息する三大恐竜たち。特にオープニングの海中シーンは、スティーヴン・スピルバーグ監督による第1作を彷彿とさせる臨場感で、映画ファンにはたまらない演出です。主演のスカーレット・ヨハンソンが銃を構え、恐竜に立ち向かう姿も印象的。女性ヒーローの時代を象徴するようなカッコよさが、スクリーンで鮮やかに映えます。▶︎公式サイトはこちら👉 https://www.jurassicworld.jp/🔶 この夏、映画館で“記憶”と“冒険”に出会う戦争の悲劇を見つめ直す作品、現代社会を鋭く切り取るサスペンス、そしてド迫力のアドベンチャー。ジャンルは異なれど、心に残る作品が揃った8月の映画館。暑さを忘れて没入できる珠玉の3本。ぜひ、涼しい映画館でご体感ください。🎤 解説:上妻祥浩 🎙 聞き手:江上浩子

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見えてきた「自由の揺らぎ」――日本学術会議の組織変更をめぐって読み解く、政治と学問の危うい関係

見えてきた「自由の揺らぎ」――日本学術会議の組織変更をめぐって読み解く、政治と学問の危うい関係

見えてきた「自由の揺らぎ」――日本学術会議の組織変更をめぐって読み解く、政治と学問の危うい関係

🔶静かに成立した“重大法案”通常国会の終盤、日本学術会議を特殊法人に移行する法律が2025年6月11日に成立した。自民党・公明党・日本維新の会の賛成多数によって可決されたこの法案は、2026年10月の施行をもって、戦後75年近く「国の機関」として存在してきた学術会議の在り方を大きく変える。一方でこの法改正に関するメディアの扱いは限定的であり、多くの国民がその本質に触れる機会を持たないまま、重要な節目が通過していった。🔶 端緒は“6人任命拒否”問題この問題の発端は2020年、当時の菅義偉首相が日本学術会議の会員候補105人のうち、6人の任命を拒否したことに遡る。従来の政府見解では、学術会議から提出された候補者は"形式的に"首相が任命するのが慣例とされてきた。菅首相は「総合的・俯瞰的観点から」とのみ説明し、それ以上の理由は明かさなかった。この曖昧さが「学問の自由の侵害」として多くの学者・市民の批判を呼んだ。「理由を言わないことが最大の問題。説明責任を放棄することで、学者に“忖度”を促すような空気が生まれてしまう」――と、宮脇利充さんは警鐘を鳴らす。🔶恐怖による支配構造と“政治忖度”の懸念理由なき拒否は、政府にとって都合の悪い学者を排除する“サイン”にもなり得る。中国での事例(企業関係者がスパイ罪で拘束され、その根拠が不透明なまま重罰を受けるケース)を引き合いに、宮脇さんは「恐怖による自己規制が広がる構図は、民主主義にとって非常に危険だ」と指摘する。「このままでは、学問の独立性が損なわれ、政権の顔色を伺う研究者が増えてしまう可能性すらある」🔶日本学術会議の本来の役割とは学術会議は1949年、第二次世界大戦で科学が軍事に利用された反省から誕生した。「軍事研究は行わない」という立場を堅持しつつ、政府に対して科学的知見から勧告や提言を行う、独立性の高い組織として存在してきた。「学者の役目は政府の下請けではない。人類全体の幸福のために、真理を追求し続けること」――宮脇さんの言葉は、学術会議が果たしてきた歴史的背景を物語る。🔶法改正の“実質的な中身”とは?今回の法改正では、以下の変更点が含まれている:会員数の拡大(210人 → 250人)任命主体の移行(首相から会議へ)勧告権の維持財政支援の継続一見、自由度が増したかのように見えるが、実態は異なる。新たに加わる“外部識者”による選考介入、首相による監事と評価委員の任命など、政府による影響力の強化が進む。「外から見ると良い改革のように見えるが、中身を見れば“支配構造の強化”ともとれる内容。これが将来的に学問の自由を脅かさないかどうか、慎重な監視が必要だ」🔶アカデミズムと政治の距離感学術・科学・メディアへの圧力は、海外でも見られる。宮脇さんは「アメリカのトランプ政権を例にとっても、まず最初に攻撃されるのはメディアと学問だった」と話す。「科学的知見が権力にとって“不都合な真実”であるとき、それを封じ込めようとする力が働く。それは民主主義社会の健全性を蝕む第一歩になる」“自由”の本質は、異なる意見が共存できることにある。日本学術会議の制度改正が、学問の自由と政治の距離にどのような影響をもたらすのか。いま改めて、私たち一人ひとりがこの問題に目を向けるべき時期に来ている。聞き手:江上浩子(RKKアナウンサー)話し手:宮脇利充(元RKKアナウンサー)

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