家庭と学校の“協育”をもう一度――PTAの価値とこれから

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家庭と学校の“協育”をもう一度――PTAの価値とこれから

🔶 テーマの背景:教育は学校の“専売特許”ではありません田中慎一朗校長は「教育は、家庭と学校が一緒に子どもを育む営みです」と強調します。市教育委員会内では先月、「家庭と学校の連携について考える会」(PTAのあり方を含む)が発足し、田中校長も委員として参加しています。第1回会合では、現役PTAや学校現場の声を交え、今後の方向性について議論が始まったところです。🔶 いまPTAに起きていること:加入率低下と“休止化”近年、PTAの加入率は下がり、学校によっては活動が休止状態という例も見られます。前提としてPTAは任意団体であり、加入の有無で子どもが不利益を受けてはならない――これは大前提です。そのうえで田中校長は、「PTAは学校と家庭をつなぐ、大切な“橋”であり続けてきました。なくなることで失われる機能は小さくありません」と指摘します。🔶 PTAの“3つの機能”:なくして気づく基盤インフラ1. 共助機能(助け合い・ピアの支え) * 大会遠征や活動に伴う費用の一部補助など、会費を原資に“いざ”というときの支えになります。 * 経済的支援だけでなく、悩みや不安を分かち合うピア(同じ立場)コミュニティとして機能します。転入直後など、相談先が見つけにくい家庭の受け皿にもなります。 2. 監督機能(監視ではなく“モニタリング”) * 学校は「子どものため」を軸に全力で動きますが、ときに“思い”が先行して硬直化することもあります。 * PTAは保護者代表として、行事や運営、学習・生活指導の進め方に建設的な意見を出し、学校と対等な立場で改善を促す存在です。 * 個別の苦情が“全体の声”なのかを確かめる手続き(集約・合議)を担い、校長や学校側の相談相手(セーフティネット)になります。 3. 教育機能(“教える”から“共に育てる”へ) * 強い一方通行の指導が通りにくい今こそ、学校と家庭が“指導の一貫性”を共有し、共に育てる体制が不可欠です。 * 学校ツアーや校内観察、職業講話・体験(キッザニア型企画)など、PTAが“学びの場”を開発・運営することで、地域ぐるみの学びが広がります。 * 出水南中では、PTA活動が評価され文部科学大臣表彰を受けるなど、機能の可視化にも結びついています。 「PTAは“学校の下部組織”ではありません。保護者の代表として、学校と“対等に”子どもたちの最善を考えるパートナーです」(田中校長)🔶 誤解されがちなポイント:任意加入と“公平”の両立 * 任意加入は不変:加入しないことによる不利益はあってはなりません。 * 組織の透明性がカギ:会計・意思決定・役割分担を“見える化”することで、非加入の理由(負担感・不透明感)を減らせます。 * “関わりやすい小さな参加”を用意:ワンショットのボランティア枠、オンライン会合、タスク細分化で参加障壁を下げます。 🔶 出水南中の実践アイデア(再現可能なヒント) * 学校ツアー&コメントバック:保護者目線の気づきを学校へ“伴走フィードバック”。 * 職業講話・体験デー:保護者の専門性を学びに変換、キャリア教育の共同設計。 * 三者パートナー会議:生徒会長×PTA会長×校長が同じテーブルで、校内課題を“協議→合意→実装”。 🔶 これからのPTAデザイン:5つの提案 1. ミッション再定義:「子の最善の利益」を憲章化し、活動を“目的ドリブン”に。 2. 役割のマイクロ化:1時間・単発・オンラインOKの“小さなジョブ”を量産。 3. 情報のオープン化:議事録・予算・効果測定を簡潔にWeb共有。 4. 合議の仕組み:個別意見→PTAで集約→学校へ提案の標準ルートを整備。 5. 評価と表彰:関わりの可視化(バッジ・感謝状・SNS紹介)でモチベーションを回す。 🔶 まとめ:PTAは“なくすか/残すか”ではなく、“進化させる”田中校長は、「PTAは学校にとって“良き友人”です。時に支え、時に諫め、共に育てる。いま必要なのは“今のまま”ではなく、“これからの形”を共に考えることです」と結びました。教育は学校だけでは担いきれません。家庭と学校、そして地域が“協育”の視点で手を結ぶとき、子どもたちの学びと安心は確かなものになります。出演:熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さん聞き手:江上浩子(RKK)

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