「愛国」の法制化がもたらす不自由の足音――「国旗損壊罪」と表現の自由の境界線

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「愛国」の法制化がもたらす不自由の足音――「国旗損壊罪」と表現の自由の境界線

サッカーのワールドカップなどの熱狂もあり、街やスタジアムで「日の丸」を目にする機会が増えています。そんな中、国会では自国の国旗を傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」の法案審議が進められています。自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党の4党が共同提出したこの法案は、成立の公算が大きいとされていますが、国民の意識やメディアの論調はどのように分かれているのでしょうか。元RKKアナウンサーの宮脇利充氏が、各紙の報道や専門家の見解を交え、この法案が社会に与える影響を解説します。聞き手はRKKの江上浩子です。🔶 世論調査に見る国民の温度感――「必要」が過半数も、無党派層には慎重論2026年6月20日・21日に行われた各社の世論調査では、法案を「必要」とする声が多数派を占めているものの、支持層によって明確な違いが見られます。 * 朝日新聞の世論調査: 「作る必要がある」が52%、「その必要はない」が40%と、12ポイントの開きでおよそ過半数が必要性を認めています。ただし、自民党支持層では「必要」が65%に達する一方、無党派層では「必要ない」が47%(必要は41%)と逆転しています。 * 共同通信の世論調査: 「必要」が49.7%、「必要ない」が42.3%となり、やはり必要とする声が上回っています。 スポーツ国際大会などの高揚感も手伝い、「国旗を大切に扱わないのは良くない」という心情が数字に表れていると言えますが、これが「法律による処罰」に直結することへの是非は慎重に見極める必要があります。 🔶 メディアの論調――「公共の福祉」か「恣意的運用の防止」かこの法案を巡り、各新聞社の社説も賛成の立場から異なる視点を提示しています。 * 産経新聞の社説: 今国会での成立を強く支持。「国旗の損壊は社会の秩序を乱し、公共の福祉に明確に反する」とし、憲法12条の「自由や権利の乱用禁止」を根拠に、中道改革連合や共産党などの左派野党の違憲批判を退けています。 * 読売新聞の社説: 法案成立には賛成しつつも、「恣意的な運用が行われないよう、具体的な違反事例をできるだけ丁寧に示す必要がある」と釘を刺しています。 ここで宮脇氏が比較として挙げるのが、かつて制定された「ヘイトスピーチ解消法」です。実際に特定の人々の人権や尊厳を著しく毀損していたヘイトスピーチでさえ、憲法の「表現の自由」への配慮から罰則規定は見送られ、教育や啓発に留められました。これに比べ、主観的な「不快や嫌悪の情を催させる方法」という曖昧な基準で拘禁刑や罰金を科す国旗損壊罪が、本当にそこまで急いで成立させるべきものなのかという疑問が残ります。 🔶 「国旗」の次は「国歌」へ?表現と創造性を狭める「入り口」という懸念法案の本質的な危うさについて、朝日新聞夕刊のコラム「ポップスみおつくし」に掲載された、大阪公立大学の増田聡教授の寄稿が鋭く指摘しています。増田教授は「法によって保護すべき利益がなく、表現や思想良心の自由を無用に束縛する」として法案に反対した上で、次のような懸念を表明しています。「国旗損壊罪が云々されるご時世ならば、やがては『国歌損壊罪』も議論になるのかもしれない」実際、中国やロシア、フランスなどでは国歌の侮辱を規制する法制度が存在します。特に中国の「国歌法」は厳格で、替え歌などの演奏禁止だけでなく、商業活動や冠婚葬祭での演奏すら不可とされています。音楽やポップカルチャーの歴史を振り返ると、国歌をモチーフにした名演奏が数多く存在します。 * ジミ・ヘンドリックス(1969年): ウッドストック・フェスティバルでの、ベトナム戦争への抗議の意を込めたサイケデリックなアメリカ国歌の演奏。 * フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ): NBAの試合前における、ベース1本による独創的な星条旗(アメリカ国歌)演奏。 もし「国歌を侮辱した」「不快感を与えた」としてこれらが処罰の対象になる社会が訪れれば、芸術的な創造性や表現の自由は完全に閉ざされてしまいます。国旗損壊罪の成立は、そうした「不自由な社会」への入り口になりかねないという危惧があります。 🔶まとめ:主観的な罰則がもたらす「不自由な空気」を警戒せよ「国旗を大切にしたい」という国民の素朴な心情を利用する形で進む法制化。しかし、「誰がそれを不快と判断するのか」という基準が曖昧なまま刑罰が導入されれば、社会の不自由さは加速していきます。今回の法案審議は、単に日の丸を守るためのものではなく、私たちの「表現の自由」や「内心の自由」をどこまで国家に委ねるかという、極めて重大な岐路であることを忘れてはなりません。出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん/聞き手:江上浩子(RKK)

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