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今月公開の映画から、聞き手の江上浩子(RKK)が、ゲストの上妻祥浩さんに「これはぜひ」と推された3本を、放送の空気感は残しつつ、読み物として整理しました。テーマはばらばらなのに、どれも“人が自分を守るために選ぶ行動”が、ちゃんと痛くて、ちゃんと愛おしい。そんなラインでつながっていました。🔶『架空の犬と嘘をつく猫』|1月9日(金)公開まず上妻さんが挙げたのは、日本映画『架空の犬と嘘をつく猫』。タイトルだけで、もう少し胸がざわつきます。犬は“架空”、猫は“嘘をつく”。つまりこの映画、最初から「現実の置き場所」がぐらりと揺れている。物語の核にあるのは、家族が互いを傷つけないためにつく“やさしい嘘”です。けれど、やさしさは時に、嘘の免罪符にもなる。上妻さんが語ったのは、そうした嘘が積み重なっていく30年の時間です。少年だった主人公が大人になり、家族の中で「守るための嘘」と「嘘が生むひずみ」がせめぎ合い続ける。ポイントは、嘘が単なる悪役ではないところ。嘘は人を苦しめもするし、同時に“生き延びるための仮設住宅”にもなる。だからこそ観る側も簡単に断罪できず、むしろ「家族って何だろう」「絆って何だろう」と問いが戻ってくる。嘘って、ちいさくても30年分ためると、だいぶ重い。雪だるまどころか雪崩です。原作は寺地はるなさんの同名小説で、映画は佐賀県(さがけん)の風景の中で撮影されたことも触れられました。主演は高杉真宙さん。共演に伊藤万理華さん、深川麻衣さん、安藤裕子さん、向里祐香さん、安田顕さん、余貴美子さん、柄本明さんらが並び、家族という“逃げられない舞台”を、世代ごとの手触りで支えます。公式サイト:https://usoneko-movie.com/公開日:1月9日(金)🔶2本目:『ウォーフェア 戦地最前線』|1月16日(金)公開2本目は一転して、アメリカ映画『ウォーフェア 戦地最前線』。上妻さんの紹介は明快で、「戦場のど真ん中に、観客を閉じ込めるタイプ」です。共同監督・脚本はアレックス・ガーランドと、米軍特殊部隊出身のレイ・メンドーサ。設定は2006年のイラク、危険地帯ラマディ。特殊部隊の小隊が監視と狙撃の任務で建物に潜伏し、やがて包囲され、逃げ道のない状況に追い込まれる。上妻さんが強調していたのは「過剰に盛らないのに、容赦もしない」という質感でした。序盤は何も起きない“待ち”が続き、その空白が逆に緊迫を増幅する。そして戦闘が始まった瞬間、映画は観客の呼吸まで奪いにくる。現場は混乱し、負傷者が出て、判断は遅れ、パニックが伝染する。映画的に気持ちよく整理されないまま、ただ「戦場はこういう場所だ」と突きつけてくる。この作品は、観終わったあとに軽い感想が出にくいと思います。けれど、上妻さんが言うように、だからこそ“重く受けとめる”価値がある。戦争を「遠い映像」から「近すぎる体験」に引き寄せることで、私たちの想像力の怠け癖を、容赦なく叩き起こします。公式サイト:https://a24jp.com/films/warfare/公開日:1月16日(金)🔶『万事快調〈オール・グリーンズ〉』|1月16日(金)公開3本目は日本映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』。上妻さんの言葉を借りれば、「とんでもない設定なのに、ちゃんと青春映画として成立して、見終わると妙に清々しい」。舞台は田舎町。鬱屈を抱えた女子高校生たちが、現状を抜け出すために“一攫千金”を狙う。そして同好会「オール・グリーンズ」を結成し、学校の屋上で「禁断の課外活動」を始める——公式サイトも、その一線の危うさを隠さずに提示しています。ここで大事なのは、彼女たちが最初から“悪い子”として描かれるわけではない点です。むしろ「どこにも行けない」「変えたいのに変えられない」という閉塞感が先にある。上妻さんが話していたのも、笑いとハラハラが同居しつつ、最後は観る側の心の奥に「わかる、わかるんだよ」と残る感触でした。キャストは、朴秀美役に南沙良さん、矢口美流紅役に出口夏希さんのW主演。岩隈真子役は吉田美月喜さん。公式サイト:https://www.culture-pub.jp/allgreens/公開日:1月16日(金)
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