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夏休みが終盤を迎え、2学期が近づくこの時期は、不登校や行きしぶりを抱える子どもたちにとって精神的な負担が急激に高まるタイミングです。熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長が、かつての不登校の教え子から聞いた切実な本音をもとに、大人が良かれと思ってかける言葉が潜むリスクと、心理学における「ノット・ノウイング(知らない姿勢)」を取り入れた寄り添い方について解説します。聞き手はRKKの江上浩子氏です。🔷 学校に行っていない子にとっても「新学期の始まり」は苦しい不登校の生徒にとって、夏休み中も新学期に入っても「学校に通っていない」という物理的な状況自体は変わりません。しかし、元不登校の教え子たちは「夏休みが終わって学校が始まった瞬間が一番きつかった」と口をそろえて振り返ります。夏休み中は全校生徒が休みであるため対等でいられますが、新学期が始まると「みんなは通えているのに、自分は通えていない」「できていない、悪いことをしている」という強い罪悪感や自己否定感が子どもの胸の中に押し寄せてきます。地震などの災害体験による不安も重なりやすい時期だからこそ、大人が子どもの心の中で起きている心理的な変化に深い関心を持つことが求められます。🔷 「不安だよね」「大丈夫?」という言葉が孕む罠子どもが新学期を前にソワソワしていたり憂鬱そうにしていたりすると、親や教員は「不安だよね」「大丈夫だよ」「無理なら休んでいいからね」と優しく声をかけがちです。しかし、アメリカの心理学者ハーレーン・アンダーソン氏らが提唱した家族療法や対話の理論(コラボレイティブ・アプローチ)では、こうした言葉がけが思わぬ逆効果を生む可能性が指摘されています。「不安」が前提として固定化される「学校に行くの不安だよね」と大人が言ってしまうと、対話の中で「不安であること」が事実として固定化され、子どもは「不安をどう解消するか」という枠組みに閉じ込められてしまいます。本音を隠させる圧迫感「大丈夫?」と聞かれると、子どもは心配する親に気を使って「大丈夫」と答えざるを得なくなります。これは地震などの被災時にも同様で、「親や大人が不安そうにしているから、自分が『怖い』と言うと余計に混乱させてしまう」と、子どもが自分の本音に蓋をしてしまう構造と同じです。🔷 子ども自身が「心の専門家」――「ノット・ノウイング」の姿勢とは大人側が経験や知識を持つ「専門家」として指導・支援しようとする姿勢がかえって子どもを追い詰めることがあります。そこで重要になるのが、知識や先入観を横に置き、大人が「ノット・ノウイング(私はまだあなたの心の中を知らないという姿勢)」に立つことです。当事者である子どもに教えてもらう子ども自身の心の中で何が起きているのかを一番よく知っている「専門家」は、大人ではなく子ども自身です。大人は「私はあなたの胸のうちをまだ知らないから、教えてほしい」というスタンスで向き合います。感情を決めつけずに語りを引き出す「あなたの中にモヤモヤしたものがあるなら、よかったら聞かせてほしい」と語りを促します。「それは毎日続くのかな?」「辛くならない瞬間もあるのかな?」と対話を重ねることで、子ども自身が自らの語りによって心情を整理していくプロセスを支えます。🔷 大人が心がけるべき3つの接し方答えをすぐに提示して問題を解決しようとするのではなく、子どもが安心して本音を語れる環境をつくるために、大人は以下の意識を持つことが大切です。自分の主観として伝える「あなた不安でしょ」と相手の感情を決めつけるのではなく、「あなたの様子を見ていて、私には少し不安そうに見えたよ。違っていたらごめんね」と、あくまで大人側の見え方(主観)として言葉をかけます。言葉を選ぶ「沈黙」を待つ子どもが言葉を選べずに考え込んでいる時間は、自分の気持ちにぴったり合う言葉を懸命に探している時間です。大人は途中で言葉を遮ったり誘導したりせず、ゆとりを持って待つ姿勢が必要です。気負わずに「ともにそこにいる」完璧な答えや解決策を提示する必要はありません。ただ一緒に過ごし、「あなたの話をいつでも聞く準備があるよ」という空気を発しながら、子どもの物語の中に寄り添い漂うことが何よりの救いとなります。🔷 まとめ2学期を迎えるにあたり、子どもたちも大人たちも気負いすぎる必要はありません。何か特別なアドバイスをしようとするのではなく、「私はあなたの今の気持ちをまだ知らないから、話したくなったときに教えてね」という姿勢で寄り添い、子どもが一人で抱え込まずに大人を頼れる環境を整えていくことが大切です。出演:熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さん聞き手:江上浩子(RKK)
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