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🔶「仏教と火」に息づく光と香りお寺に足を運ぶと、必ずといっていいほど目にする「ろうそく」や「お線香」。これらには、仏教における深い意味が込められています。今回は、「仏教と火」をテーマに、その象徴的な意味や浄土真宗における作法、さらには迷信との違いまで、幅広くご紹介します。🔶ろうそくの火に込められた意味ろうそくの火は、仏さまである阿弥陀如来の「智慧」と「慈悲」を象徴しています。暗闇を照らす明かりは智慧、そして温かさをもつ炎は慈悲のあらわれです。心が氷のように凝り固まってしまっている私たちに、仏さまの知恵と慈悲の光が差し込むのです。🔶ろうそくの色と形の違い日本では江戸時代中期から色付きろうそくの文化が広まり、現在では用途によって様々な色のろうそくが使われています。一般的な白のろうそくは法事などでよく用いられ、赤は浄土真宗で最も重要な行事である報恩講、銀は中陰法要、金は結婚式や住職の就任式など、お祝いの場で用いられます。形状も、まっすぐな棒状のものや、ウエストがくびれた「イカリ型」と呼ばれる形があり、浄土真宗ではこの「イカリ型」が主流です。また、素材には「和ろうそく」と「洋ろうそく」がありますが、お寺ではすすが取りやすいことなどから和ろうそくが使われます。🔶お線香とお香の意味お線香やお香も火を使う仏具の一つです。日本書紀によると、お香は595年にはすでに使われており、悪臭を除き、心を落ち着かせる作用があるとされています。阿弥陀如来の「分け隔てない慈悲の心」を香りによって感じる——そんな意味が込められているのです。🔶浄土真宗の作法と起源お線香の使い方は宗派によって異なります。浄土真宗では、お線香は立てずに横にして供えます。これは、江戸時代以前に使われていた「抹香」の名残であり、抹香を粉状にして横に火をつけていたことが由来です。また、焼香の作法も特徴的です。一礼してから抹香を1回だけつまみ、額にあてずそのまま香炉に入れ、再び一礼します。このように、宗派ごとに異なる作法があるため、自分の信仰する宗派の作法に則って行うのが望ましいでしょう。🔶「火の番」は迷信?かつては通夜の晩に、ろうそくや線香の火を一晩中絶やさない「火の番」が行われていました。その理由は「火を絶やすと死者が迷う」といった迷信に基づいていたのです。しかし、現代では火事のリスクを考慮して、安全性の観点からも火を絶やすことが推奨されます。迷信と現実の区別をしながら、仏教の教えを大切にしたいものです。🔶今週のまとめ今週は「仏教と火」をテーマに、ろうそくやお線香に込められた意味や、浄土真宗における作法、そして迷信との向き合い方についてお話ししました。ろうそくの炎には阿弥陀如来の「智慧」と「慈悲」が表され、色や形には用途ごとの意味があります。お線香やお香には、心を清める香りとしての役割があり、その使い方にも宗派ごとの深い意味が存在しています。日常の中にある小さな「火」のひとつひとつにも、仏教の教えが息づいているのです。来週のテーマは「月の兎」。どうぞお楽しみに。お話は、熊本市中央区京町にある仏嚴寺の高千穂光正(たかちほ こうしょう)さん。お相手は丸井純子(まるい じゅんこ)でした。
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高千穂さんのご縁です。