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🔶年忌の数え方と儒教・十王信仰に由来する歴史私たちが日常的にお勤めする法事は、正式には「年忌法要(ねんきほうよう)」と呼びます。お葬式やお通夜、四十九日の「満中陰(まんちゅういん)」に始まり、その後は一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌、十七回忌、二十三回忌、二十七回忌、三十三回忌、五十回忌と続いていきます。ここで「なぜ一周忌の翌年が三回忌なのか」と疑問に思う方も多いでしょう。これには諸説ありますが、一説には中国の儒教の習慣が元になっているといわれています。儒教の喪服の期間において、亡くなって13ヶ月目を「少祥(しょうしょう)」、25ヶ月目を「大祥(だいしょう)」と呼び、これが日本の一周忌(満1年)と三回忌(数え年で3年=丸2年後)の起源となりました。また、なぜ「3」や「7」のつく年に法事を行うのかという点についても、江戸時代に無著道忠(むちゃくどうちゅう)が編纂した辞書『禅林象器箋(ぜんりんぞうきせん)』などの古書に歴史が記されています。『地蔵菩薩発心因縁十王経(じぞうじゅうおうきょう)』に代表される十王信仰や、中国の故事が日本の伝統文化と融合し、長い歴史を経て現在の年忌のサイクルが定着していきました。🔶悲しみを癒すプロセスと故人の記憶の継承数年ごとに巡ってくる法事のサイクルには、遺された私たちが「悲しみを癒していく大切なプロセス(過程)」としての意味が込められています。身近な人を亡くした直後は深い悲しみに暮れますが、一周忌、三回忌とお勤めを重ねる中で、少しずつ心の痛みが和らいでいきます。そして七回忌や十三回忌ともなると、亡くなったおじいちゃんやおばあちゃんの顔を直接知らない小さなお孫さんが同席することもあります。そうした席で「この家はおじいちゃんが建ててくれたんだよ」「こういう優しい人だったんだよ」と、みんなで思い出話を語り合うことこそが何よりの供養となります。時の経過とともに薄れがちな故人の記憶を家族や友人で共有し、次の世代へと受け継いでいくための、法事は実によくできた尊いサイクルなのです。🔶浄土真宗における法要の四つの意義仏教において法事中にお経をあげることには、大きく分けて四つの大切な意味(意義)があるといわれています。一つ目は「仏徳讃嘆(ぶっとくさんたん)」。仏さまの計り知れないお徳を、声を揃えて褒め称えることです。二つ目は「仏徳領受(ぶっとくりょうじゅ)」。仏さまの尊いみ教えを、自らの心にしっかりと受け入れることです。三つ目は「仏恩報謝(ぶつおんほうしゃ)」。仏さまから注がれている大いなる慈悲に対して、心からの感謝を伝えることです。四つ目は「仏徳奉行(ぶっとくぶぎょう)」。いただいたみ教えを日々の生活の拠り所とし、しっかりと歩んでいくことを誓うことです。この四つの歩みを参拝者全員で共有することが、法事という儀式の本質なのです。🔶追善供養ではなく「私のための法事」ここで最も大切なのは、浄土真宗における法事は「遺された者が、亡き人を迷わないようにあの世へ吊り上げるために行うものではない」という点です。一般的な仏教では、遺族が善い行いをしてその功徳を故人に届ける「追善供養(ついぜんくよ長)」という考え方がありますが、浄土真宗は異なります。亡くなられた方は、阿弥陀さまの導きによってすでに迷うことなくお浄土で仏さまとなられている(往生即成仏)と受け止めるからです。したがって、法事は「これだけ供養してやったからもう安心だろう」と善根を積む場ではなく、他でもない「今を生きるこの私」が、故人を縁としてお念仏のみ教えに出会い、自らの命のあり方を見つめ直すために開かれている場なのです。🔶仏前へのお供え物の心得と「向き」の真実法事やお墓参りの際、仏前や墓石にお酒やタバコをお供えされる方をよく見かけます。「故人が生前に好きだったから」という優しいお気持ちからでしょう。しかし、仏教(特にお浄土の清浄さを重んじる浄土真宗)においては、実はこれらはあまりふさわしくないお供え物とされています。仏前へのお供えの基本は、お香、お灯明(ローソク)、お花、そして仏飯(お仏飯)や果物などの「五聖(五供)」です。故人が欲しがるものをこちらから一方的に送り届けるという「向き」ではなく、仏さまとして完成された清らかな世界に対し、私たちが敬意を持って身構えを調え、み教えに耳を傾けさせていただくという「向き」が大切です。このお供え物の本来の意味を一つ胸に留めておくだけで、法事の合掌の深さは大きく変わるはずです。🔶今週のまとめ【1】法事(年忌法要)の数え方は、満1年目に行う「一周忌」を除き、すべて数え年(三回忌は丸2年後、七回忌は丸6年後)で計算されます。【2】一周忌(少祥)や三回忌(大祥)といった年忌の数字は、中国の儒教の風習や『禅林象器箋』に記される十王信仰などが、長い日本仏教の歴史の中で培われて定着したものです。【3】定期的に巡ってくる年忌法要には、遺族が亡き人を偲びながら悲しみを癒す心理的なプロセスとしての役割があり、故人の思い出を次世代へ語り継ぐ大切な機会となっています。【4】浄土真宗の法事には「仏徳讃嘆」「仏徳領受」「仏恩報謝」「仏徳奉行」の四つの意義があり、故人を追善供養するためではなく、「今生きる私がみ教えに出会うため」に修されます。【5】仏前へのお供えは、故人の嗜好品(お酒やタバコなど)を届けるのではなく、仏さまのお飾りとしてふさわしい五供を調え、私たちが仏さまと向き合わせていただく場であることを心得ることが大切です。次回テーマは「お盆(おぼん)のお話」です。どうぞお楽しみに。お話は、熊本市中央区京町(きょうまち)にある仏嚴寺(ぶつごんじ)の高千穂光正(たかちほ こうしょう)さん。お相手は丸井純子(まるい じゅんこ)でした。
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高千穂さんのご縁です。